ナフサ問題から歯科医院を守る経営とは

スタッフ教育

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はじめに

皆さんこんにちは!歯科医院地域一番実践会のコンサルタントの渡邊です。本日は「ナフサ問題から歯科医院を守る経営とは」というテーマでお伝えしてまいりたいと思います。

最近、原材料費やエネルギー価格の高騰、物流費の上昇、人件費の上昇など、さまざまなコスト増が企業の経営を圧迫しているというニュースを目にする機会が増えています。

中でも最近ニュースを賑わせているのがナフサ不足によるカルビーのパッケージではないでしょうか?

日本経済新聞
カルビーのポテチ、なぜ白黒包装に? ナフサ不足が覆す売り場の常識

実際にカルビーの2026年3月期の決算が先日出ておりましたが、売上は前年度比で5.5%アップしましたが、営業利益では10%減となり、その原因の1つにインフレの影響をあげています。
カルビー 2026年3月期決算短信

一方医療機関の手袋の不足などは国が備蓄手袋を5000万枚放出するなどの対応を行っていることもあり、苦しいですが何とか最小限に留められているという印象です。
日本経済新聞
ナフサ不足で軟こう容器・松葉杖・手袋ピンチ 中小医院、資材逼迫で苦境

しかし本当に怖いのは既にあらゆるところで起きている価格の高騰です。ただでさえ、様々な要因で原価があがっていたところに、今回のホルムズ海峡の影響で原油価格が高騰し、食品、医療、建設、運送、製造など、幅広い業種で厳しい状況が起きていくと考えられます。

2026年6月の診療報酬改定がございますが、2年に1回の診療報酬改定の対策だけでは足りなくなってくると私は考えております。

実際に日々経営の現場で院長先生と会話をしておりますと、材料費、技工料、光熱費、人件費、採用費、広告費など、医院経営に必要な費用は確実に上がっています。

一方で、保険診療は材料費が上がったからといって、すぐに患者様からいただく金額を自由に上げられるわけではありません。

このような背景を踏まえると、これからの歯科医院経営では「医業収入を上げる」だけでは「利益を守ることが出来ずに医院を守れない」という状況になってくると思います。

インフレが起きる前から一貫してお伝えしてはおりますが、経営において大切な視点として「どう医業収入を伸ばすか?」という視点が欠かせない時代になっています。

「診療効率を高める」という視点が、これまで以上に重要になってきていると言って間違いないと思います。

物価高は一時的な問題ではない

これまでの日本では、長い間「価格があまり上がらない」ことが当たり前のように感じられてきたと思います。

材料も、電気代も、外注費も、人件費も、多少の変動はあっても大きくは変わらない。そのような前提で経営をしてきた医院さんも少なくないのではないでしょうか。

しかし、今は明らかに前提が変わってきています。
世界情勢の不安定化によるブロック経済化、エネルギー価格の変動、円安の進行、人手不足による賃金上昇などが重なり、あらゆるものの価格が上がりやすい時代になっています。

AIやフィジカルAIなどによる構造改革は急速に進み待ったなしではありますが、もう少し時間がかかるという印象です。

歯科医院で考えても、グローブ、紙コップ、滅菌用品、印象材、セメント、レジン、金属、技工物、医療機器、修理費、電気代など、日々の診療を支えるものの多くが外部環境の影響を受けています。しかし、それらは患者様から見えにくいコストです。

患者様からすると、同じ治療を受けているように見えるかもしれませんが、医院側から見ると、同じ診療をしていても、以前より利益が残りにくくなっているということが起きています。

ここで大切なのは、現実を冷静に見ることです。経営は感覚だけで判断すると、「売上はそこまで悪くないから大丈夫」と考えてしまいがちです。

一方で、数字の詳細を見てみると、医業収入は維持できていても、利益率が下がっている、材料費率が上がっている、人件費率が高くなりすぎているということがあります。

歯科医院の医療法人の4割が赤字という報道もございますが、これらの現状を踏まえると、これからの院長先生に求められるのは、短期的な売上だけではなく、長期的な利益構造を見据えた経営判断ではないでしょうか。
厚生労働省 医療機関等を取り巻く状況について

数字と現場をつなげる

歯科医院経営において、まず大切なのは定量情報と定性情報を分けて整理することです。

定量情報とは、売上、保険点数、自費金額、材料費、人件費、技工料、キャンセル率、リコール率、新患数などの数字です。
定性情報とは、スタッフの皆さんの動き、患者様の反応、カウンセリングの質、予約の取り方、院内の雰囲気、説明のばらつきなど、現場で起きている事象です。

例えば、材料費が上がっているとします。その時に「材料を節約しよう」とだけ伝えても、現場は動けません。なぜなら、スタッフの皆さんからすると、何をどこまで気をつければよいのかが分からないからです。

大切なのは、数字と現場をつなげて考えることです。
「今月は材料費率が上がっている」
その原因は何かを明確にしていきます。
「在庫管理の問題なのか」
「発注単位の問題なのか」
「診療内容の変化なのか」
「無駄な開封や廃棄が増えているのか」
「スタッフの皆さんがコスト感覚を持てていないのか」

このように、数字を入口にして現場を観察することが重要です。

私の経験上、数字だけを見て院長先生が一方的に指示を出すと、スタッフの皆さんは「自分たちがムダ遣いをしているように言われている」と受け取ってしまうことがあります。

一方で、現場の声だけを聞いていると、「忙しいから仕方ない」「人が足りないから仕方ない」という話で終わってしまうこともあります。

だからこそ、数字と現場の両方を見ながら、冷静に整理することが大切です。材料費が上がっているのであれば、単に「使うな」ではなく、「どの材料を、どの場面で、どの基準で使うのか」を明確にしていく必要があります。

利益を守るということは、患者様に必要な医療を削ることではありません。無駄を減らし、必要なところにしっかり投資できる状態をつくることです。

目的を共有する

次に重要なのは、スタッフの皆さんと目的を共有することです。

物価高やコスト増の話は、伝え方を間違えると、スタッフの皆さんにとっては「経営者都合の話」に聞こえてしまうことがあります。
「材料費が高いから節約して」「人件費が高いから効率よく動いて」と言われると、現場としては自分たちが頑張っていないせいと言われてしまったと感じ、関係性が悪化することも考えられます。

しかし、本来はそうではありません。

医院に利益が残るからこそ、設備投資ができます。教育に投資できます。採用に投資できます。結果、スタッフの皆さんの待遇改善にもつながり、患者様により良い医療を提供するための環境も整えることができます。

つまり、利益を守ることは、院長先生だけのためではありません。
医院を継続させ、患者様を守り、スタッフの皆さんの働く場所を守るために必要なことです。

ここを丁寧に伝えずに、いきなり「コストを下げよう」と言ってしまうと、現場との間にズレが生まれます。逆に、目的を先に伝えると、スタッフの皆さんの受け止め方は変わります。

例えば、院長先生がこのように伝えることが大切だと考えています。

「今、材料費や光熱費が上がっていて、医院としても利益が残りにくくなっています。ただ、私たちは患者様に必要な医療の質を下げたいわけではありません。むしろ、これからも良い医療を続けるために、無駄を減らし、必要なところに投資できる医院にしていきたいと考えています。そのために、皆さんの力を借りたいです」

このように目的を共有したうえで、具体的な行動に落とし込むことが重要です。
例えば、在庫の発注ルールを見直す。材料の開封基準を決める。技工物の再製を減らすために形成や印象の基準を整える。キャンセルによる空き時間を減らす。自費カウンセリングの説明品質を高める。保険算定の漏れを減らす。こうした一つ一つの取り組みが、医院の利益を守ることにつながっていきます。

仕組みで解決する

物価高時代の経営で避けたいのは、院長先生の気合いと現場の我慢だけで乗り切ろうとすることです。

もちろん、院長先生の危機感は大切です。スタッフの皆さんの協力も必要です。しかし、気合いや我慢だけでは長続きしません。むしろ、現場が疲弊してしまい、職場の雰囲気が悪くなることもあります。

だからこそ、仕組み化が重要です。

例えば、キャンセル率を下げたいのであれば、「キャンセルを減らそう」と言うだけでは不十分です。予約時の声かけ、前日確認、無断キャンセル後の対応、次回予約の取り方、治療の必要性の説明などを、具体的な手順に落とし込む必要があります。

自費率を上げたいのであれば、「もっと自費を提案して」と言うだけでは現場は動けません。どの患者様に、誰が、いつ、どのように説明するのか。ドクターからスタッフの方へどのように引き継ぐのか。資料は何を使うのか。説明後のフォローは誰が行うのか。ここまで決めることで、初めて行動が安定します。

声をあげるだけでは、組織は動きません。仕組みがあるから動きます。

そして、仕組みを作る際に大切なのは、院長先生だけで決めないことです。
現場のスタッフの皆さんと一緒に考えることです。なぜなら、患者様と接しているのも、予約を取っているのも、現場のスタッフの皆さんと一緒に行っているからです。

人を育てる経営へ

物価高やナフサ不足のような外部環境の変化は、院長先生一人の力で止めることはできません。原材料価格も、為替も、エネルギー価格も、診療報酬制度も、医院単独で変えることは難しいです。

しかし、医院の中で何を見るか、何を改善するか、どのような基準で動くかは変えることができます。
ここで差が出てくるポイントが、人の育成です。

これからの歯科医院では、単に手が動くスタッフの方だけではなく、医院全体を見て考えられるスタッフの方が確実に必要になってきます。

材料の使い方に気づける人。患者様の説明不足に気づける人。予約の取り方の問題に気づける人。数字を見て現場とつなげられる人。こうした人材がいる医院は、変化に強くなります。

一方で、こうした力は自然に身につくものではありません。院長先生や幹部スタッフの方が、日々の仕事の中で「なぜこの取り組みをするのか」「この数字は何を意味しているのか」「患者様にとって何が大切なのか」を伝え続ける必要があります。

例えば、材料費の話をする時も、単なる節約の話で終わらせないことです。
「この材料を大切に使うことは、医院の利益を守るだけではなく、必要な設備投資や教育投資につながる」
「再製を減らすことは、技工料の削減だけではなく、患者様の来院回数や負担を減らすことにもつながる」
「キャンセルを減らすことは、売上のためだけではなく、患者様の治療中断を防ぐことにもつながる」
このように意味づけを伝えることで、スタッフの皆さんの仕事の見え方が変わっていきます。

私は、歯科医院経営において最終的に差がつくのは、仕組みと人材の両方だと感じております。仕組みだけあっても、人が育っていなければ運用されません。人の頑張りだけに頼っても、仕組みがなければ継続しません。

これはAIを活用しても同様だと考えています。

もちろんAIへ投資し活用していくことは重要ですが、AIが広まった先には皆AIを活用しており差がつくのは結局“人”ということになるのではないかと思います。

特に歯科医院の場合は“人”がいなければ医療が提供出来ません。
他業界で言えば、商品に該当するものが“人”になります。

例えばiPhoneがあれだけ売れるのはiPhoneのデザイン、機能、ブランドイメージが素晴らしいからです。

iPhoneユーザーが評判を広めることでiPhoneの価値はあがっていきます。

歯科医院の場合はiPhoneに該当するものが“人”になります。

重要なポイントは人を育成するには3年―5年、あるいはそれ以上かかるということです。
マネジメントが苦手ということでは、良い治療を提供できる人を育てることが出来ません。

だからこそ、院長先生には、数字を見ながら、現場を見ながら、人を育てる経営を出来るだけ早く進めていただきたいと考えています。

まとめ

今回のナフサ不足や物価高のニュースは、歯科医院経営にとって非常に重要な視点を与えてくれます。材料費、技工料、光熱費、人件費、採用費など、医院経営を取り巻くコストは今後も上がっていく可能性があります。

このような時代に大切なのは、ただ不安になることではなく、数字と現場を照らし合わせて、冷静に医院の状態を把握することです。そして、目的をスタッフの皆さんと共有し、無駄を減らし、必要な投資を続けられる仕組みを作ることです。

最後に重要になってくるのはやはり人です。
だからこそ、院長先生が目的を語り、幹部スタッフの方と一緒に現場を整え、スタッフの皆さんが考えて動ける状態を作ることが大切です。

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もし、教育をお考えのスタッフさんがいらっしゃいましたら、セミナーへのご参加を期待を込めてお伝えしてみてください。
中堅スタッフを成長へ導く スーパースタッフ育成塾

日本では長い間“人”への育成投資の意識が低く、低生産性、低成長が続いてきました。
インフレ期はそれでは難しくなってきます。

先生が期待されるスタッフに投資をし、先生の医院で長期的に活躍出来る人材をいかに育成していくか。この観点が重要です。

物価高時代の歯科医院経営では、利益を守ることが、患者様を守ること、スタッフの皆さんを守ること、医院の未来を守ることにつながります。

まずは今月の数字を見ながら、どこに無駄があり、どこに改善の余地があるのかを一つ確認することから始めていただければと思います。

先生の医院が更に良くなることを心より願っております。

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