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なぜ今、教育が重要なのか?
皆さんこんにちは、経営戦略研究所のコンサルタントの渡邊です。
昨今の歯科医院を取り巻く環境は、急激に変化しています。
まず直近の厚生労働省が公開している医療動態調査の結果によりますと、歯科診療所の件数は6万5933件と日を追う毎に減少してきています。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040280787
最近の米不足の騒動も重なり物価が高騰、世界情勢の変化からくるインフレなどによる実質賃金の目減りの問題は患者様の財布事情の変化や働き手の意識を変え、皆さんの医院の経営をこれからも直撃していくと思われます。
国が給付金を支給するという話が出ていますが、これはまさにコロナの時と一緒だと思います。
つまり緊急事態宣言時に近い状態だと言えると思います。
実際に様々なニュースでそう感じさせる報道がされています。
日本人の人口は2024年で89万人減少し、先日の報道でも出生数70万人割れという衝撃的なニュースが出てきており、1県の人口を超えるインパクトが襲ってきています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA09AO00Z00C25A4000000/
地域によってはライフラインの根幹が揺るがされるといった不安もあり、大きな変化が求められています。
大企業の早期退職、企業の倒産の話も後をたちません。
AI活用やDX化などの推進が急激に進んでいる背景には、やらざるを得ない理由があるからだと思います。そしてそのことが歯科医院の2極化が進んでしまっている大きな理由となってきています。
そのような劇的な変化が起きている中で、日本では政治不安が進み、あの民主主義のリーダーであったアメリカでも分断が進み大規模なデモに発展しています。
国としての根幹が大きく揺らいでいる今、私たちが身近で感じるマネジメントにおける揺れは更に大きなものになっていると思います。
そもそもなぜ国自体が揺れてしまっているのか?
それは、多様性という名の元に価値観が大きく異なってきているからだと思います。
私も多様性を認め合う世の中というのは素敵だと思います。
しかし、その多様性という言葉をいいことに全体感を失いバランスを大きく崩してしまっている状態だとも感じています。
「日本のために、会社のために、周りの人のために」このような視点を失ってしまっては、どれだけ自分が良くなろうと思っても立っている足元がぐらついてしまい、いつか自分も倒れてしまいます。
恐らく、先生の目の前にいるスタッフの皆さんの価値観は驚くほど多様化しています。
例えば、最近では退職代行サービスというサービスが活況のようです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC317FQ0R30C25A3000000/
私は長らく人材会社に勤めていたことから、とても考えさせられます。
確かにこのようなサービスがあることで、組織の課題は浮き彫りになり、
より良い状態へ変化を促していく力となる効果はあると思います。
しかし一方で大きな問題をはらんでいると思います。
それは働く人にとって「辞める」という選択肢が簡単に出来てしまうことで、
「踏ん張りどころ」を体験することが出来なくなってしまうということです。
私は今まで厳しいと感じる環境こそ、振り返ってみると成長を実感出来たという経験があります。
それが全てではないにしても、しっかりとこのようなサービスの是非を検討をすることなく安易にこのような話に飛びついてしまう現状は、若者の成長を阻害する要因になってしまわないかとても心配です。
昭和のような深夜に及ぶサービス残業や、
ハラスメントが横行しているような職場環境で
本当に深く悩まれている方であればともかく、
ニュースになったことで安易に飛びついてしまうのだとしたら
その先には茨の道が待ち受けていると思います。
恐らくこのような時代背景から
人材の採用難・定着難という経営課題が、
院長先生方の頭を悩ませているのではないでしょうか。
先生に考えていただきたいのは、その採用や定着を一緒に行ってくれる人材がいるかどうかという事です。
そのような定着を一緒に取組んでもらえるようになるために重要な視点が「中堅スタッフの育成」です。
このポジションは、現場の即戦力でありながら、皆さんの組織を繋いでくれる次世代のリーダー候補でもあります。この層が弱い組織はこの局面を乗り越えることは出来ないと考えています。
1人の優秀なスタッフに頼ってしまっているという状況も非常に危険です。
しかしそのような大切な存在にも関わらず、中堅スタッフの皆さんの“育成の機会”や“ロールモデル”が乏しいという医院も非常に多く見られ、リーダーになりたくないという人も増えてしまっています。
多様性が進み、足元が大きくぐらついている中でも厳しさと優しさのバランスをとりながら、スタッフが強く育つ環境を整えていくこと。
これが、院長先生に今求められている重要なマネジメントの視点です。
今回はこのような激動の時代における教育の重要性に関して
考えてまいりたいと思います。
タイパ世代の教育の方向性
「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が象徴するように、今の若い世代は「時間を無駄にしたくない」という意識が非常に強いと言われています。
私は常々思うのですが私たちは必ず若者の価値観に負けていくと考えています。そう考えますと、この考え方は世の中全体の価値観として広まっていく可能性が高いと思います。
もし仮に報酬=その人が提供する付加価値の結果だとすれば、タイパを高めるためには時間あたりで自分の出来ることを増やさないといけません。
これは簡単なことでしょうか?
ポイントはどの程度の期間で物事を考えるかということだと思います。
また余程優秀な人でない限り、自分が出来ることは他の人も簡単に出来るということを忘れてはいけません。ChatGPTなどを活用し今までは出来ないことが出来るようになっていくと思います。しかしそれが当たり前になると、それだけでは差がつかないのです。
それどころかChatGPTは便利すぎるためより一層自分で考える力を失ってしまう人も増えていくことで、2極化が進んでいくと思います。
最終的には人の力がついているかどうかということが大事になってきます。
私は新しくチャレンジすることで、最初から効率よくうまく出来たことなどあまり記憶がありません。
チャレンジさせてもらえる環境と、周りの先輩方の助けによって力をつけていく。
そのようにしてはじめてタイパを高めていけると感じています。
つまり、今の時代に必要なことは「辞めずに周りと良好な関係を築いて自分の力をつけていくこと」だと思います。
現実的にはAIやDX化などによってこれからも生産性は劇的に高まっていくと思います。
一方で、人口減少をしていくのであればその消費は落ち込みます。
そのままいくと人件費が高いという理由で雇用が減って、またデフレになってしまいます。
どの組織も人の力で付加価値を高めて、商品やサービス、医療の質を高めて、
実質的な値上げや賃上げを実現しなくてはいけません。
つまり今こそ人の成長が求められているのです。
では人の成長を促すための今の時代にあった教育とはどのような形なのでしょうか?
教育の土台をどう設計するか
私はこれからの時代の教育には大きく3つのポイントがあると考えています。
■ 厳しさと優しさのバランス
優しすぎる職場を去る若者が出てきているという考え方があります。
これは、変化の激しい現代において若者の不安が高まっていることの現れだと思います。
厳しくするのが良い、優しくするのが良いという軸ではなく、
どのように接すればその人が育っていくのかという軸で教育を行っていくことが求められていると思います。
具体的にはティーチングとコーチングをそれぞれ必要に応じて教育現場で使っていくということです。
先生の医院のスタッフさんの中でこの違いを理解して、後輩教育を行える方はどの程度いらっしゃるでしょうか?
■ “仲の良い”職場環境
SNSなどの影響もあり承認欲求が高いスタッフが非常に増えています。
一方で他の人の目を気にしすぎてしまい、学生時代に人とぶつかるような経験をしてきている方も非常に少ないように感じます。
人は人とのぶつかりあいの中でたくましく磨かれていきます。
しかし今はSNSやChatGPTなどを活用するのではなく、そこに逃げてしまう方が多くいらっしゃいます。
それでは成長は実現出来ないということを、社会人の先輩が力強く導いてあげることが重要です。
そう考えますと職場内でのコミュニケーションの重要性は日に日に高まっています。
医院旅行や懇親会、部活動…これらは単なるイベントではなく、「相談・質問しやすい関係」を築くための大切な場となっています。
周りと仲良くなり仲間と信頼関係を築くことで、教育効果は何倍にも高めていくことが出来ます。
しかし、実際にはどのように接したら良いかわからないという理由で先輩は先輩、後輩は後輩という形で分かれてしまうことも多いようです。それではうまくいきません。
■ 価値観を統一する
これが一番難しいことかもしれません。多様化している価値観を統一していくには、リーダーシップや人格を今まで以上に磨いていくことが求められると考えています。
リーダーシップや人格は他者との間の信頼残高を増やすことに繋がります。
先生の医院では仲の良い、考え方が似ている特定の方同士のコミュニケーション量が増えてしまっているということはございませんでしょうか。
このような状態は分断に繋がり、全員がある程度の安心感を持って自分の力を発揮出来る組織へと成長していくことは叶いません。
信頼残高を増やしていくための言動が出来る方は医院にどの程度いらっしゃいますでしょうか。
これらが、今先生の医院で求められている教育の方向性だと考えています
このような教育の考え方、やり方を身につけるには
このような教育に関することを医院だけで実現するのは簡単ではありません。
だからこそ、年に一度の「スーパースタッフセミナー」が存在します。
このセミナーでは、これまで3000人以上の中堅スタッフが参加し、多くのスタッフの方が医院の中心として活躍されています。
実際、継続して参加していただいている医院さんでは「医院全体の空気が変わった」「中堅スタッフが新人の教育を継続して実践してくれて定着率があがった」という嬉しい報告を聞けることも多いです。
それは上記でお伝えしました
・ティーチングとコーチングの違いを意識した面談
・信頼残高を高める日々の言動
・価値観を統一していくための実践
これらを宿題とともにセミナー参加の期間で実践していくからだと実感しています。
中には継続してご参加いただく方も増えてきております。それは現場でのマネジメントの難易度が高まっておりより深く理解したい、より実践を積み重ねたいということだと思います。
2025年開催からはスタッフの皆さんの負担に配慮し、宿題の質は落とさずに量を大幅に減らす決断をいたしました。それは多様化するライフスタイルや考え方から宿題の量が原因で、成長の機会を失ってしまうことが医院にとって大きな損失があると感じたためです。
年に1コースの開催となっております。成長を期待しているスタッフの方がいらっしゃいましたら是非院長先生もご一緒にご参加ください。
https://www.consuldent.jp/seminor/superstaff.html
また院長先生ご自身のマネジメント力を高めたいという方は院長マネジメント力徹底強化セミナーをご検討ください。
https://www.consuldent.jp/seminor/inchou.html
最後に
2025年はマネジメントの時代です。
今までも難しかったのですが、
激動の時代の中で更に難しくなっています。
スタッフの皆さんと一緒に準備ができている医院とそうではない医院で大きく2極化してくることが予測されます。
自分の成功ではなく、自分のいる組織の成功を一緒に目指していくことでその先に自分の成功があると思います。
その順番を間違えてしまい、大きくバランスを崩してしまいやすい時代だとも思います。
今回のブログを通して、一緒にこの局面を打開していけたら嬉しく思います。