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皆さん、こんにちは!
歯科医院地域一番実践会の井ノ上です。
最近、歯科業界でもAI(人工知能)やDX化といった言葉を非常によく耳にするようになりました。当社のブログでも「歯科医院でのAI活用」や「【2026年】歯科医院経営のAI導入と生産性向上!」といったテーマが取り上げられるなど、生産性向上や業務効率化を目的としたAIに対する関心はかつてないほど高まっています。
そんな中、先日もクライアントの院長先生より、次のようなお悩みをいただきました。「井ノ上さん、最近はChatGPTなどの生成AIが話題なので、うちの医院でも積極的に活用して日々の業務効率化を進めたいと考えています。ただ、今のスタッフは決してデジタルツールに強いわけではなく、新しいシステムを使いこなせるか不安です。いっそのこと、AIツールの導入や運用を専門に任せられる『AI人材』や『DX担当者』を新しく採用した方がいいのでしょうか?」という相談をいただきました。
確かに、他業界を見渡しても、もはや業務においてAIツールを活用することは当たり前かつスタンダードになっています。人材不足が叫ばれる中、最新の技術を使って少しでもスタッフの負担を減らし、働きやすい環境を作りたいと考えるのは、経営者として当然の視点だと思います。
ただ、AIが便利だからといって、闇雲に使いこなせないツールやサービスを導入するために新しい人材を採用すればいいものでもありません。

「AI人材の採用」より前に考えるべき根本的な課題
以前、私は当ブログで『歯科衛生士を「採る」時代から「育てる」時代へ』という記事を投稿させていただきました。実は、これはAI活用に関しても全く同じことが言えると思います。外部から新しく「AIが使える人」を採ってくるのではなく、今いるスタッフを「AIを正しくツールとして使いこなせる人材」へと育てていく視点こそが、これからの医院経営には必要不可欠なのです。
AIツールの導入自体が「目的」になってしまう危険性
多くの医院が陥りがちなのが、流行りに飛びついてAIツールや高額なシステムの導入自体が目的になってしまうことです。これは非常に危険な状態です。
極端な話ですが、何の目的もなく「新人用の業務マニュアルを作って」とだけAIに指示を出したとします。確かに一瞬でもっともらしい文章は出来上がりますが、その内容をそのまま鵜呑みにしてしまうと、自院が大切にしている理念や、先輩スタッフが築いてきたノウハウから大きくズレた画一的なマニュアルができあがってしまいます。また、患者様からいただいたGoogle口コミへの返信文を何も考えずにAIに丸投げしてしまうと、患者様の感情に一切寄り添っていない、ただの機械的な返信になってしまう危険性もあります。
これでは、本来の目的であるはずの「患者様満足度の向上」や「スタッフのやりがいある職場づくり」からは遠ざかってしまいます。便利なツールを使うハードルが下がっている今だからこそ、安易にAIに頼りすぎるのは危険なのです。AIはあくまで強力な「手段」であり、最終的にどのような指示(プロンプト)を出し、出力された結果を自院の文化にどう落とし込むかを判断するのは、人間の「考える力」です。
若手スタッフから「自ら考える力」を奪わないために
この「自ら考える力」は、特に新人や若手スタッフの育成において極めて重要になります。
右も左も分からない新人時代から、すぐにAIに答えを求める環境を与えてしまうとどうなるでしょうか。「先輩に聞く前にAIに聞く」「自分で改善案を練る前にAIに出してもらう」ということが習慣化すると、一見すると作業スピードは上がるかもしれません。しかし、現場のリアルな患者様の反応を見ながら「なぜこの言葉がけが良いのか」「なぜこの業務フローになっているのか」をスタッフが自ら考え、そして悩み、考え抜く経験を奪ってしまうことになります。
自分で考え抜く実体験を持たずにAIの答えだけを使ってしまうと、本質的な課題解決力や、イレギュラーな事態に対応する応用力が育ちません。AIを最大限に活かすためには、まず自分自身のベースとなる思考力や知識が備わっていることが大前提となります。デジタル時代だからこそ、こうした人間本来のベースとなるアナログな思考力が求められるのです。
スタッフ主導で進める「スモールステップ」のAI活用
では、具体的にどうすればよいのでしょうか。
わざわざ外部から高額な費用をかけて「AI人材」を採用するのではなく、今いる既存スタッフの思考力を高める教育へとシフトし、少しずつ現場でもAIを取り入れて、実践していくのが良いかと思います。
最初から大掛かりなAIシステムを導入する必要はありません。まずは無料のChatGPTや、身近なGoogle関連サービス、Canva、あるいは使い慣れたLINEといったツールを使ったスモールステップから始めることをお勧めします。

私のクライアントでも、いきなりトップダウンで「AIを使え」と指示するのではなく、「この日常業務をもっと楽にするためには、AIにどんな条件や前提を伝えて質問すればいいか?」をスタッフ自身に考えてもらうワークの機会を設けています。例えば、院内にプロジェクトチームの中で、スタッフ主導でAIを取り入れつつ運用を任せてみるのも非常に有効な手段です。
「当院のペルソナ(ターゲットとなる患者像)はこういう人だから、もっと温かみのある言い回しになるようにAIに指示を出そう」「当院の理念に照らし合わせると、この表現は合わないから修正しよう」といった議論がスタッフ間から自然に生まれるようになれば良い傾向です。
日々の業務の小さな改善や、AIへのプロンプトの工夫もチリツモなので、スタッフを巻き込んで「自ら考える力」を育てていくことが、結果的に医院全体の大きな業務効率化へと繋がっていくのではないでしょうか。スタッフ一人ひとりが主役となり、現場の納得感を持ってDX化を進めることが成功の秘訣だと思います。
これからの時代、AIに振り回されるのではなく、AIを正しく使いこなせる思考力を持ったスタッフの育成は必須かと思います。「AI人材」を外に探しにいくのではなく、今いるスタッフが「自ら考える力」を養える環境づくりに、ぜひ取り組んでみてください。
今回の記事が、皆様の医院のスタッフ教育や業務効率化のきっかけになっていただければ幸いです。













