最低賃金の引き上げ。医院として考えることとは

労務・人事評価・採用

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皆さん、こんにちは!

歯科医院地域一番実践会の井ノ上です。

長期化している物価上昇などで、全国で最低賃金の引き上げが順次、適用されています。全国平均で43円の引き上げられ、時給1004円となっています。みなさんの開業している地域ではどれくらい引き上げられていますでしょうか。主要都市である東京は59円、大阪は42円、福岡は41円と大幅に引き上げられています。

最低賃金の引き上げ額

厚労省が公開している地域別最低賃金の全国一覧をご覧ください。

地域別最低賃金の全国一覧

歯科医院としても多くのスタッフを雇用している企業になります。大きな影響が及んでいるのではないでしょうか。言えることは、この賃金の引き上げに対して、すでに対策を練って行動に移している医院、特に何もしていない医院とで今後の経営状況が変わってくるということです。

人件費の増加

例えば、月60時間働くパートスタッフの時給を40円引き上げたとして、医院の負担額は月に約2,500円も増加することになります。常勤であれば、月160時間働いている計算で、月に約6,400円の増加になります。もし、全スタッフの賃上げを行わないといけない状況であれば、かなりの人件費コストになります。

採用力の低下

人件費が増えることで利益が圧迫され、採用に注げるコストも限られてきます。さらに、周りの歯科医院も同様に賃上げを行っていれば、賃金での競争で勝ち抜くことが難しくなります。周りの医院が上げて、それに対抗してこちらも賃金を上げ続けるとなると、体力勝負となり資金が十分にないといずれジリ貧になります。

こういった状況を見据えて、医院としてやらないといけないことは大きく2つあります。医院の利益を確保すること、そして採用力を高めることになります。特に後者が長い目で見て重要になってくると感じています。

働く魅力を高める

常日頃からお伝えしていることですが、医院での働く魅力をさらに高めていく必要性があるのではないでしょうか。条件などの外面的ではなく、教育、人間関係、働きやすさ、労務などの内面的な要素で他の医院との差別化を図らないといけません。

つい、短期的な成果を求めるが故に条件面の改善に目を向けがちですが、長期的に考えると、間違いなく医院の内面を磨くことで高い採用力を手に入れることができます。

私の担当する医院でも、近隣より給与を高く設定して応募が数倍にも増えたケースはありました。その結果どうなったか。

医院に合わないレベルの低い応募者ばかりが集まり、ほとんど採用に至っていません。むしろ、見学や面接の数が無駄に増えたことで疲弊してしまっているほどです。とりあえず採用であれば、医院に合わなくても良いのかもしれませんが、いずれは組織として崩れていくでしょう。

診療時間の短縮も同様です。早く帰れることが一番の押しになっている医院では、良い人材を採用できるかという観点では、採用力としては決して高くはありません。

最後に

条件面の改善が悪いと言っているわけではないですが、言ってしまえば条件面というのは、誰でも書面上で簡単に書き換えできる作業なので、差別化が難しいのです。

一方で、教育体制を整えたり、医院旅行に行くほど雰囲気の良い人間関係を築いたり、スタッフが産休育休明けに戻って来ている、来たくなる医院作りというのは、一朝一夕にはできません。

だからこそ、そこには価値があるのだと思いますし、分かる応募者にはそれが魅力として映って、優秀な人材が集まってくるのではないでしょうか。

今回、最低賃金の引き上げに合わせて、給与の見直しを行うことは最低限必要なことですが、むやみやたらに上げてしまうと、人件費だけが増大し利益が圧迫されてしまいます。

みなさんの医院としての採用力とは何なのか向き合う良い機会になるので、ぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

前回の記事、「歯科医院のチームビルディング」も採用にいかせる内容になっていますので、ご参考にしてください。また、賃上げに伴って医院の利益を確保するために必要なこととして、「自費の価格設定を再検討する重要性」の記事もぜひご覧ください。

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投稿者プロフィール

井ノ上 貴之
井ノ上 貴之
鹿児島県出身。鹿児島大学を卒業後、大学院に進学、ディープラーニングに関わる研究に従事。修了後、富士通(株)に新卒で入社。
代表の岩渕とは趣味のバスケットボールを通じて親交があり、経営戦略研究所の理念・ビジョンに感銘を受け、入社に至る。

IT業界で培った知識・経験を生かし、医院を地域一番へと導く。

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