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皆さん、こんにちは!
歯科医院地域一番実践会の井ノ上です。
最近、クライアントの院長先生から「せっかく新卒を採用したのに、数日、数週間で辞められてしまった」「本人からの連絡もなく、ある日突然、退職代行の業者から電話がかかってきた」というご相談をいただくことが増えています。
正直なところ、これは特定の医院だけで起きている特別な話ではありません。採用のミスマッチと早期離職は、今、歯科業界全体が直面している構造的な課題になりつつあります。
新卒の傾向として起こっていることは、職場環境に馴染めず、食欲不振やストレスなど、体調が優れないからと心療内科に罹るスタッフが以前より明らかに増えているように思います。私が新卒の時代は、精神医療・心療内科などは「特別な場所」という印象でしたが、精神疾患で医療機関を受診する患者数はこの20年で約2倍以上に増加し、今や非常に身近な存在になっているようです。
数字が示す、早期離職の現実
数字で見ても、それは明らかです。厚生労働省が2025年10月に公表したデータによると、令和4年3月卒業者の就職後3年以内の離職率は、高校卒で37.9%、大学卒で33.8%にのぼります。実に3人に1人以上が、3年以内に最初の職場を離れているのです。
さらに深刻なのが、退職の”伝え方”そのものが変化していることです。東京商工リサーチの調査でも、社員に退職代行を使われた経験のある企業の割合は2019年以前の15.7%から、2024年上半期には23.2%まで上昇しています。もはや、退職代行は一部の特殊なケースではなく、残念ながらスタッフの誰もが退職時に考える選択肢になっているのです。
背景には、世代間の価値観のギャップがあります。パーソル総合研究所の調査では、2025年度に傷病手当金を受給した人のうち「精神および行動の障害」が原因だった割合は、20〜24歳で54.56%、25〜29歳で55.53%と、他の年代と比較しても突出して高くなっています。若手ほど、期待していた仕事内容や職場の空気感とのギャップに、心身で反応してしまいやすいということではないでしょうか。
歯科業界も、決して例外ではありません。日本歯科衛生士会の歯科衛生士を対象とする勤務実態調査によると、歯科衛生士の76.4%が1回以上の転職を経験しており、常勤としての在籍期間の中央値はわずか4.2年です。1人が早期離職すると、採用してもすぐに辞められてしまう状態は、医院にとって金額に換算できるほど、大きな経営リスクなのです。
ミスマッチの正体は「入社前の理解不足」
では、このミスマッチはどこで起きているのでしょうか。
私は、入社前の”理解・認識のすり合わせ”が不足していることが、最大の要因だと考えています。
一般企業では、インターンという文化が当たり前に根付いています。学生は入社前に実際の業務や社風を体感でき、企業側もその期間で人柄や適性を見極めることができます。双方にとって、いわば”お試し期間”が制度として存在しているわけです。
歯科医院にとって、それに近いものが実習制度です。ただ、実習は学校との連携が前提になるため、医院が単独で自由に設計できるものではありませんし、実習生がそのままその医院への就職希望者になるとも限りません。つまり、歯科医院には一般企業のような「入社前にお互いを知る仕組み」が、構造的に不足しているのです。

歯科医院に足りない「お試し期間」
そこで検討していただきたいのが、有給の”体験勤務”です。
これは大掛かりな制度ではなく、選考の一環、もしくは内定後に、1日〜数日程度、実際にアルバイトとして現場に入ってもらうというシンプルな取り組みです。選考の中に組み込めば、医院側は実際の働きぶりを見た上で採用の可否を判断でき、ミスマッチの芽を早い段階で摘むことができます。内定後に組み込むのであれば、入社の意思が固まった候補者に対して、職場の空気感や具体的な業務内容を体感してもらい、認識のズレを入社前にすり合わせることが目的になります。どちらにも良さがありますので、医院の採用フローに合わせて選べば良いと思います。
体験勤務のメリットは、医院側だけのものではありません。候補者にとっても、「思っていた仕事と違った」という入社後のギャップを事前に解消できる貴重な機会になります。双方が納得した上で入社に至れるという点で、これは医院と候補者、双方にメリットのある取り組みだと言えます。

アルバイトからの就職が最強な理由
以前、当ブログ「歯科衛生士を「採る」時代から「育てる」時代へ」でもお伝えしましたが、私は個人的に、アルバイトとして働いていたスタッフがそのまま医院に正式に就職するケースこそ、もっとも理想的な採用の形だと考えています。
体験勤務がスポット的な位置づけだとすれば、アルバイトはそれよりも長い期間、実際の業務や医院の雰囲気を肌で感じられる体験につながります。働く期間が長くなるほど、お互いの理解も深まりますし、医院側もそのスタッフの人柄や成長度合いをじっくりと見極めることができます。
実際、私が担当しているクライアントの医院でも、アルバイトからそのまま正社員として就職したスタッフは、通常の採用ルートで入社したスタッフと比べて、定着率が圧倒的に高いという結果が出ています。入社前にすでに医院に馴染んでいる状態からスタートできることが、大きなアドバンテージになっているのだと思います。
そう考えると、有給の体験勤務は、いわば”アルバイト採用のミニチュア版”とも言えます。1日、数日という短い期間であっても、その体験を丁寧に設計することが、入社後の定着へとつながっていくのです。
ただ、ここで忘れてはいけないこととして、体験勤務も、採用そのものも、あくまで”入口”に過ぎないということです。

採用はゴールではない
どれだけ入社前のギャップを埋めても、入社後の教育やフォローが不十分であれば、結局は同じようにスタッフは辞めていってしまいます。採用をゴールとして捉えるのではなく、入社前の期待値のすり合わせから、入社後の丁寧な教育、定着までを一つの流れとして設計すること。それこそが、これからの歯科医院に求められる採用のあり方ではないでしょうか。
皆さんの医院では、採用のゴールをどこに置いていますか。「採用できたかどうか」だけで終わっていないか、一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。













