10人・30人・50人の壁とは

歯科医院経営ブログ

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皆さん、こんにちは!
歯科医院地域一番実践会の中澤裕太朗です。
9月に入りましたが、まだまだ暑い日が続きますね。
下半期に入り、来年の採用計画や組織体制を考え始める時期かと思います。

最近、院長先生からこのようなご相談をいただくことが増えました。
「スタッフが15人を超えたあたりから、急に医院がまとまらなくなったんですよね」
「昔は言えば伝わったのに、今は同じことを言っても伝わらないんです」
「オープニングの頃はみんな仲が良くて、ご飯にも行っていたんですけどね」

このような話は結構多くの先生からお聞きします。
これに関しては、先生の伝え方が悪くなったとか、
スタッフさんの質が落ちたということでは必ずしもありません。
組織の人数が変わると、必要なマネジメントそのものが変わるからです。

そして、その変わり目が「組織の壁」と呼ばれるものです。
10人、30人、50人。それぞれの手前で、必ずと言っていいほど同じことが起こります。
今回は、この3つの壁について書いていきたいと思います。

なぜ、人数が増えるとまとまらなくなるのか

まず、壁の話に入る前に、その前提となる考え方をお伝えします。
組織を考えるときは、「人数」だけを見ていても分かりません。
もう一つ「コミュニケーションライン」、人と人が直接やり取りする経路を考える必要があります。

AさんとBさんの間に1本、という数え方をします。

4人の医院に、線は何本あるか

まず、3人の医院で考えてみます。
AとB、AとC、BとC。線は3本です。ここは直感通りかと思います。
では、4人になると何本になるでしょうか。
おそらく多くの方が「4本」と答えられると思います。
私も最初にこの話を聞いたときは、そう思いました。
正解は、6本です。

3人だと3本、4人だと6本のコミュニケーションライン

人が増えると、線は人数以上のペースで増えていきます

図にすると分かりやすいのですが、4人だと四角形の4辺に加えて、
対角線が2本入ります。だから6本です。
これは人が増えると、加速度的にこのコミュニケーションラインは増えていきます。
実際に数えていくと、こうなります。

  • 10人 → 45本
  • 15人 → 105本
  • 20人 → 190本
  • 30人 → 435本
  • 50人 → 1,225本
  • 100人 → 4,950本

10人から30人になると、人数は3倍です。
ですが、線の数は45本から435本へ、約10倍に増えます。
10人から100人になると、人数は10倍ですが、線の数は110倍です。

現在、100名規模の医院様を担当させていただいていますが、
その組織の中には4,950本の線が走っているということになります。
数字にすると、なかなかの数ですよね。

線が増えると、何が起きるのか

この複雑さに耐えられなくなると、こういうことが起こり始めます。

  • 伝えたはずなのに、伝わっていない
  • ある人には伝わっているのに、別の人には伝わっていない
  • 先生が伝えた内容が、下に降りるときに違う形で解釈されている
  • 現場で起きていることが、院長先生のところまで上がってこない

「まとまらなくなった」正体は、たいていこれです。
人間関係が悪くなったのではなく、線の数に構造が追いついていない、ということなんですよね。
この話は、以前YouTubeでも解説しています。

組織拡大期のマネジメント【YouTubeで学ぶ歯科医院経営】
組織拡大期のマネジメント<中澤 裕太朗|経営コンサルタント>歯科医院地域一番実践会 経営コンサルタント。大学卒業後、飲食業界に入社。不採算店舗の立て直しを中心に業務を行い、店長就任後、五期連続赤字だったのを昨年対比200%の実績を作り、4期...

複雑さを下げる方法は「分ける」こと

では、どうすればこの複雑さを乗り越えられるのか。
答えはシンプルで、「組織を分ける」ことです。

全員が一箇所に集まったままだと、線は増える一方です。
そこで、チームに分けて、それぞれに中間のリーダー・マネージャーを置いていきます。
例えば100名の医院様であれば、線は4,950本ありますが、
受付、助手、歯科衛生士、ドクターといった形で10のチームに分け、
それぞれにリーダーを置く。
そうすると、1チームあたりの線は10人分の45本ですから、
全体で見ても線の数は大きく減ります。おおよそ10分の1のイメージです。

ただし、ここで終わってしまうと、今度はチームごとに分断されます。
ですので、リーダー同士が集まる場を必ずセットで作ります。
そこで情報を共有し、組織の課題を解決していく仕組みまで作って、はじめて機能します。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
規模ごとに、何が課題になるのかを見ていきたいと思います。

10人の壁 ~「ベクトル」が揃っているか~

医院によりますが、
10人以下の規模の医院さんは、まだ院長先生の目が全員に届く範囲の医院さんも多いです。
ただ、この規模でも崩れる医院はあります。
その要因は、ほぼ「ベクトルのズレ」です。
ベクトルには2つあります。

  • 目的: 何のためにこの医院をやるのか
  • 方法: 何を大事にして行動するのか

この2つが曖昧なまま人を採用していくと、人数が増えるほどズレが大きくなっていきます。
人数が少ないうちは、ズレていても何となく回ってしまうケースもあります。
毎日顔を合わせていますし、院長先生がその場で修正できるからです。
ただ、それは解決したわけではなく、先送りにしているだけだったりします。

理念より先に、診療の方向性を決める

ここで1つ注意点としては、理念を先に作ろうとされる先生もいらっしゃいます。
理念は医院経営にとって非常に大事な要素です。
ただ、その前に決めておきたいのが「どんな診療をしていく医院なのか」です。
予防を軸にしていくのか、補綴や矯正の自費を伸ばしていくのか、
小児からご家族全体で診ていくのか。

ここが定まらないまま耳障りの良い言葉だけを並べても、
あとで診療の実態と合わなくなり、結局スタッフにも浸透しません。
方向性を決めて、それに合った言葉にする。この順番が大事だと現場でみていると思います。

スキルで採るか、カルチャーで採るか

そしてもう1つ、この規模でよくあるのが、
人手が足りずに「今すぐ働ける人」で採用してしまうケースです。
気持ちはすごく分かります。目の前の診療が回らないからです。

ただ、経験があるかどうか(スキル)よりも、
医院の考え方に合うかどうか(カルチャー)で選ぶ。
この順番を間違えると、あとで必ず苦しくなります。
特にこの規模だと、合わない方が1人いるだけで医院全体の空気が変わります。
10人のうちの1人は、1割なので影響も非常に大きいです。

とはいえ、面接の時間だけで見極めるのは正直難しいです。
だからこそ、見学や体験勤務の時間を長めに取っている医院さんや、
採用の価値を正しく認識して力を入れている医院さんは、
ミスマッチが少ない傾向にあると思います。

30人の壁 ~幹部が「結節点」になれるか~

一番多くの医院がつまずくのが、ここです。
先ほどの表の通り、30人になると線は435本。
院長先生が全員に直接伝える、という形はもう限界がきています。

ちなみに、1人の幹部が見られるスタッフはだいたい5〜6名までと言われます。
30人規模なら幹部・チーフが5〜6人は必要な計算で、
チーフ1人にすべてを背負わせている医院は、構造的に無理があるということですね。

「伝わり方」に、組織の状態が表れる

幹部が機能しているかどうかは、伝わり方に表れます。
院長先生が100を考えたとして、

  • 機能している医院: 幹部が90理解し、スタッフに80伝わり、スタッフが70理解して、50が実行される
  • 機能していない医院: 幹部が50しか理解せず、スタッフに30伝わり、スタッフは10理解して、動くのは5

同じ「100」を考えているのに、現場に届くのが50か5か。
取り組みの中身が悪いのではなく、途中で消えているだけ。
このケース、私が拝見してきた中でも本当に多いです。

そしてこれは、上から下だけの話ではありません。
現場のスタッフが感じていることが30しか上がってこなければ、
院長先生の耳に届く頃には、ほとんど何も残っていません。
気づいたときには退職の申し出だった、ということも起こります。

幹部やリーダーが求められているのは、この両方を繋げる役割ができるかが大事な1つの要素です。
院長先生の意図を8割から9割で受け止めて伝えられるか。
そして、スタッフの思いを汲み取って上に伝えられるか。

そもそも「役割定義」がされていない

ではなぜそれができないのかというと、多いのが
「役割定義がないまま幹部に任命してしまう」ケースです。
以前のブログでも書きましたが、
「先生にとって幹部とはどのような役割の人ですか?」
この質問に即答できる先生は、正直あまりいらっしゃいません。

そして、同じ質問を現場の幹部の方にしても、やはり答えられないことが多いです。
つまり、任命した側もされた側も、何を求められているのかが分からないまま走っている。

幹部の役割は、経営と現場の「結節点」になることが1つの要素と先ほどお伝えしましたが
そこは他の要素を定義しても、ここを抜かしてはいけないです。
会話の中で、この役割を理解して行動している人か、または幹部ではなくても
マネジメント側の観点で考えられる人材かどうかは会話を聞いていれば分かってきます。
このあたりの詳しいポイントは来年のセミナーでお話したいと思っています。

幹部の「視界」をどう上げるか

そのために必要なのが、幹部の「視界」を上げることです。
視界は、2つの要素でできています。

  • 時間: 院長先生は1年後、3年後を見ている。スタッフは今日の診療を見ている
  • 範囲: 院長先生は医院全体を見ている。スタッフは自分の担当を見ている

このズレを埋めるのが幹部の仕事でもあります。
幹部自身の視界が現場と同じ高さのままだと、そもそも結節点になれないです。
そして視界は、日頃誰と話しているかで決まります。
院長先生は他院の先生方や業者さん、メーカーさんと話す機会があります。
一方で幹部は、基本的に医院のスタッフとしか話していない。ここに差が生まれます。

私のクライアント様では、短時間でも院長と幹部だけのすり合わせの時間を毎週取っていただいています。
加えて、外部のセミナーや他医院の見学など、医院の外の景色を見る機会を幹部にも作る。
これをやっている医院の幹部は、やはり伸び方が違います。

ポストは「人」からではなく「組織」から決める

もう1つ、幹部を立てるときによくある考え方の順番についてです。
「この子がしっかりしているから、チーフにしよう」
気持ちは分かるのですが、これは人にポストを当てにいく発想です。
そうすると、その方が退職された瞬間に体制が崩れます。

そうではなく、まず「どういう組織を目指すのか」を決める。
そこから逆算して、どのポストが必要で、そこに誰を育てていくのかを考える。
順番としては、こちらが正しいです。

リーダーの適性は、段階を置いて見極める

とはいえ、誰にリーダーの適性があるのかは、いきなりは分かりません。
ですので、段階を置いて見極めていくことをおすすめしています。
まず前提として、定期的な面談を行うこと。ここは外せません。

そのうえで、

  • ステップ1: 新人スタッフの教育担当を任せてみる(1対1で人を育てられるか)
  • ステップ2: プロジェクトリーダーを任せてみる(複数人を巻き込み、計画を行動に移せるか)

プロジェクトというと、マーケティングや医院の成果を上げるための取り組み、
というイメージを持たれる先生が多いのですが、
実はマネジメント人材の見極めの場としても非常に有効です。
複数のメンバーときちんとコミュニケーションが取れているか。

成果を出すために、どういう動きができているか。
このあたりを見ていくと、適性がかなり見えてきます。
院外の学びについても、段階を作っておくと効果的です。

私のクライアント様では、

  • 1年目: 新人スタッフ研修(仕事観、ありかたを学ぶ)
  • 2年目: スーパーTC育成塾(伝える、提案する力を学ぶ)
  • 3年目~4年目以降: スーパースタッフ育成塾(幹部としての考え方を学ぶ)

という流れで受けていただくケースが多いです。
こうして段階を作っておくと、医院の中に共通認識・共通言語が生まれます。

※また、来年は初めて教育担当となるスタッフが参加して体系的に教育担当者を育成する

「新人トレーナー育成塾」を開催します。

50人の壁 ~人ではなく「制度」で支える~

50人になると、線は1,225本。10人のときの、およそ27倍です。
階層も増え、幹部の人数も増えていきます。
分院展開をされている医院様であれば、なおさらです。
そうなると、一人ひとりの力量に任せていては組織は安定しません。
ここで必要になるのが「制度」です。

  • 人事評価制度
  • キャリアステップ
  • 教育カリキュラム
  • 会議体の設計

マネジメントがまだ得意ではない人でも、それに沿って進めればある程度できる。
そういう状態を作っていくということです。

まとめ ~壁は必ず来るもの

壁は必ず来るものです。
組織がうまくいかないときに、
「自分に人望がないからだ」とご自身を責めてしまう院長先生が本当に多いですが、
今回書いてきた通り、人数が増えれば構造的に必ず起こる壁があります。

壁は規模が大きくなれば必ず来るものですし、来ることが分かっていれば落ち着いて対処できます。
組織づくりの考え方については、今後より必要になると感じています。

最後に、少しだけ告知をさせてください。
来年、弊社で「デンタルMBA」という経営プログラムがスタートします。
増患の裏技や、自費率を上げる話法を学ぶセミナーではありません。
戦略・財務・組織・マーケティングといった経営の原理原則を、
歯科医院の現場に落とし込んで体系的に学んでいく講座です。

そして、今回書いてきた組織の壁の話は、まさに「組織設計論」という講座で扱うテーマです。
権限をどう設計するか、情報をどう流すか、会議をどう機能させるか。
院長先生ご自身のリーダーシップまで含めて、人が動く仕組みを設計していきます。

ほかにも、採用から評価・育成・定着までを扱う「人材マネジメント論」、
なぜその医院が選ばれるのかを考える「マーケティング論」があり、
必要なテーマを1講座から選んでいただける形になっています。

詳細は改めてご案内いたしますが、WEB配信もありますので是非ご興味ある方はご参加いただければと思います。
今回の内容が1つでも参考になれば幸いです。
頑張っていきましょう!

 

▸ 「うちの医院の場合はどうすれば?」と思ったら、無料経営相談で具体的にお答えします。

投稿者

地域一番ディレクター 中澤 裕太朗
地域一番ディレクター 中澤 裕太朗
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