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皆さん、こんにちは!歯科医院地域一番実践会の中澤裕太朗です。
最近、クライアント先の院長先生とお話ししていると、こんな悩みを本当によく聞きます。
「スタッフが増えたのに、なぜかチームとしてまとまらないんですよ」
「1人1人は悪い子じゃないんですけど、全体で見ると機能していない感じがするんです」
これ、実は歯科医院に限った話ではありません。企業でも、スポーツでも、「良い人材を集めたのにチームとして機能しない」というのは、組織が成長するタイミングで必ずぶつかる壁です。
今回は、この問題を解決するヒントとして、麻野耕司さんの著書『THE TEAM 5つの法則』の内容を、歯科医院の現場に当てはめてお伝えしたいと思います。
この本は「チームの法則」を体系化したもので、私自身もクライアント先での組織づくりに非常に参考にしている一冊です。5つの法則のうち、特に歯科医院で効果的な3つに絞ってご紹介します。
目次
- なぜ「良い人材」を集めてもチームは機能しないのか
- 法則①「Aim(目標設定)の法則」──目標が3種類あることを知っていますか?
- 法則②「Communication(意思疎通)の法則」──心理的安全性、その前に「ありかた」を整える
- 法則③「Engagement(共感創造)の法則」──給与を上げても人が来ない時代にどうするか
- まとめ:明日からできる3つのアクション
なぜ「良い人材」を集めてもチームは機能しないのか
先日、あるクライアント先でこんな場面がありました。
院長先生が採用に力を入れて、経験豊富なDHを2名採用しました。技術も高く、患者対応も丁寧。「これで医院が変わる」と期待していたそうです。
ところが3ヶ月経っても、院内の雰囲気は変わらない。むしろ既存スタッフとの間に微妙な距離感が生まれてしまった。
院長先生はこうおっしゃいました。
「優秀な人を採ったはずなのに、なぜかチームとしてまとまらないんです」
実はこれ、「良い人材を集めれば良いチームになる」という思い込みが原因です。
『THE TEAM』ではこう書かれています。
「メンバーの力の足し算がチームの力ではない。チームの力を決めるのは”法則”である」
つまり、1人1人が優秀かどうかではなく、チームとしての設計ができているかどうかが結果を決めるということです。
では、その「設計」とは何か。今回は特に歯科医院で効く3つの法則をお伝えします。

法則①「Aim(目標設定)の法則」──目標が3種類あることを知っていますか?
多くの医院で、院長先生はこういう目標を掲げます。
「今月の自費率を30%にしよう」 「リコール率を80%にしよう」
これ自体は素晴らしいことです。ただ、この目標だけではスタッフは動きません。
『THE TEAM』では、チームの目標には3つの種類があると説明されています。
①意義目標(Why):何のためにやるのか ②成果目標(What):何を達成するのか ③行動目標(How):具体的に何をやるのか
歯科医院に当てはめると、こういうことです。
- 意義目標:「地域の患者さんが歯を失わない人生を送れるようにする」
- 成果目標:「リコール率80%を達成する」
- 行動目標:「セカンドカウンセリングで治療の選択肢と予防の重要性を丁寧に伝える」
ここでよくある失敗パターンがあります。
成果目標だけを伝えているパターンです。
「リコール率80%にして!」と言われたスタッフは、なぜそれが必要なのか(意義)が分からないまま、何をすればいいのか(行動)も分からない。結果として「やらされ感」だけが残ります。
逆に、3つを連動させて伝えるとどうなるか。院長:「うちの医院は、地域の患者さんが歯を失わない人生を送れるようにしたい(意義)。そのためにリコール率80%を目指す(成果)。具体的には、セカンドカウンセリングで患者さんの生活背景もふまえて予防計画を一緒に考える時間を取ろう(行動)」
こう伝えると、スタッフは「なぜやるのか」を理解した上で「何をすればいいか」が明確になります。
セカンドカウンセリングを例にしたのは理由があります。初診時はどうしてもヒアリングが中心になりがちですが、それは信頼関係構築として非常に重要なことです。ただし、予防の重要性や治療理解などを伝える場は時間を別でとる必要があります。
セカンドカウンセリングの場は患者さんの理解度や生活背景をふまえて「一緒に考える」場にできるのです。ここでの対話の質が、自費率にもリコール率にも直結します。
これは例えばですが、私がクライアント先で目標設定のお話をするときは、必ずこの3つがセットになっているかを確認するようにしています。もし朝礼や面談で数字の目標だけを伝えているなら、まず「なぜその目標なのか」を言葉にすることから始めてみてください。それだけでスタッフの反応が変わります。
法則②「Communication(意思疎通)の法則」──心理的安全性、その前に「ありかた」を整える
2つ目は「コミュニケーション」の法則です。
『THE TEAM』では、チームのコミュニケーションで最も重要なのは「心理的安全性」だと述べられています。「何を言っても大丈夫」という安心感のことです。
これ自体は非常に大切な概念です。ただ、歯科医院の現場でいきなり「心理的安全性を高めましょう」と言っても、正直なかなか難しいのが実情ではないでしょうか。
なぜなら、そもそも「ありかた」が整っていないケースが多いからです。
「ありかた」とは、社会人として、医療人として、チームの一員としての基本的な姿勢や行動規範のことです。挨拶をする、報連相をする、時間を守る、相手を尊重する。こうした当たり前のことが当たり前にできていない状態で心理的安全性を求めても、それは「言いたいことを言っていい=何を言ってもOK」という、ただの無秩序になってしまいます。
心理的安全性は「ありかた」という土台の上に成り立つものなんです。
では、その「ありかた」をどう整えるのか。具体的には2つのステップがあります。
ステップ①:入職時のオリエンテーションで「ありかた」を共有する
新人スタッフが入職したとき、業務の説明(やりかた)だけで終わっていないでしょうか。スケーリングの手順やアポイントの取り方を教える前に、「この医院ではどういう姿勢で働くことを大事にしているのか」を伝える時間が必要です。
例えば、
- 「患者さんにもスタッフにも、まず自分から挨拶をする」
- 「分からないことは、分からないと正直に言える人であってほしい」
- 「困ったことがあれば、1人で抱えずに相談する」
こうしたことを最初に言語化して伝えておくだけで、入職後の行動がまったく変わります。
ステップ②:定期的な「ありかた研修」で繰り返し確認する
ありかたは一度伝えて終わりではありません。人は忘れますし、慣れてくると崩れます。
半年に1回でもいいので、「うちの医院が大切にしている行動規範は何か」「今、自分はそれができているか」を振り返る場を作ることが重要です。これは新人だけでなく、ベテランスタッフや幹部も含めて全員で行うことに意味があります。
院長先生自身が「私もできていない部分がある」と正直に話す場にすると、その姿勢そのものが心理的安全性の土台になります。
ありかたが整ったチームでは、こういう変化が起きます。
- ミスを隠さず報告できる(「怒られる」ではなく「一緒に解決してもらえる」と思える)
- 改善提案が出始める(「言っても無駄」ではなく「聞いてもらえる」と思える)
- 朝礼でスタッフが自分から発言するようになる
これが本当の意味での心理的安全性です。ありかたを整える → その上に心理的安全性を築く。この順番を間違えないことが大切です。
法則③「Engagement(共感創造)の法則」──給与を上げても人が来ない時代にどうするか
最後に「エンゲージメント」の法則です。
歯科業界の採用環境が厳しいことは、院長先生が一番実感されていると思います。DHの有効求人倍率は高止まり、「募集を出しても応募が来ない」「やっと採用できてもすぐ辞める」。これが多くの医院の現実です。
「じゃあ給与を上げればいいのか」。
これは前提として必要です。業界の相場に見合った給与、できれば相場より少し上を出すことは、採用のスタートラインに立つために欠かせません。給与が相場以下の時点で、そもそも選択肢にすら入らないのが今の時代です。
ただ、給与を上げればいいかというと、それだけでは人が来ないのもまた現実なんですよね。
『THE TEAM』では、エンゲージメント(チームへの愛着・共感)は4つの要素から成り立つと整理されています。
①Philosophy(理念への共感):「この医院の考え方に共感できるか」
②Profession(仕事への共感):「この仕事にやりがいを感じるか」
③People(人への共感):「この仲間と一緒に働きたいか」
④Privilege(待遇への共感):「給与や働き方に納得できるか」
実はこの4つのP、「採用の4P」とも呼ばれています。
つまり、採用活動においても定着においても、この4つの視点で自院の強みを整理し、伝えられるかどうかが鍵になるということです。
特に重要なのが医院見学の場面です。
最近はDHの採用でも、応募の前に「まず見学させてください」というケースが増えていますよね。このとき、見学に来た方に何を伝えているでしょうか。
多くの医院では、診療の流れや設備の説明で終わってしまいます。もちろんそれも大事ですが、見学者が本当に知りたいのは「この医院は他と何が違うのか」なんです。
そこでこの4つのPが活きてきます。
- Philosophy:「うちの医院は〇〇という理念で、予防を軸にした診療を大切にしています」
- Profession:「DHには担当患者制を取っていて、自分の患者さんの口腔内の変化をしっかり追えます」
- People:「月1回のランチミーティングや、スタッフ同士で症例を共有する勉強会があります」
- Privilege:「給与テーブルはこうなっていて、等級制度で昇給の道筋が見えるようにしています」
この4つを言語化して、見学者に伝えられるかどうか。ここに差が出ます。
逆に言うと、4つのPが言語化できていない医院は、見学に来てくれても「なんとなく良さそうだった」で終わってしまい、他院と比較されたときに選ばれない。給与で勝負するしかなくなるんです。
つまり、一番大事なのは「言語化」です。
うちの医院は他とどう違うのか。何を目指しているのか。どんな人と一緒に働きたいのか。
これをしっかりと言葉にすること。
そして、言葉にしたことに対して一貫性をもって行動し続けること。
理念を掲げたけれど日常では実践されていない。見学では「チームワークが良い」と言ったのに、入ってみたらギスギスしていた。こうした「言っていることとやっていることのズレ」は、今の若い世代は驚くほど敏感に察知します。
私自身、多くの歯科医院をお伺いする中で改めて感じているのは、4つのPを言語化し、それに対して一貫性をもって進んでいける医院が、結果的に採用でも定着でも強いということです。
とはいえ、「人間関係を良くしましょう」「やりがいを高めましょう」と言われても、一般的な歯科医院では正直ハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで、小さく始められる3つのことをご紹介します。
①Philosophy(理念):採用の時点で「うちの医院の考え方」を先に語る
面接で「志望動機は?」と聞く前に、院長先生が「うちの医院はこういう想いでやっている」と先に伝える。これだけでミスマッチが減ります。理念に共感して入職したスタッフは、多少大変なことがあっても「ここで頑張りたい」と思ってくれます。逆に共感できない人は最初から来ないので、それはお互いにとって良いことです。
②Profession(やりがい):スタッフの貢献を「具体的に」言語化する
「〇〇さん、今日のSRP丁寧だったね」ではなく、「〇〇さんが担当した患者の田中さん、3ヶ月前はBOP40%だったのが今回15%まで下がっていた。〇〇さんの継続的な指導の成果だと思う」と伝える。
数字や患者名を出して具体的にフィードバックすることで、「自分の仕事が患者さんの健康に直結している」という実感が生まれます。やりがいとは「感じるもの」ではなく、「気づかせてもらうもの」なんです。
③People(人間関係):月1回の1on1から始める
大がかりなチームビルディングをする必要はありません。まずは月1回、15分でいいので「最近どう?」と1対1で話す場を作る。
アジェンダはシンプルに、「最近良かったこと」「困っていること」「来月の目標」の3つだけ。院長やチーフが8割聞いて、2割だけ話す。これを3ヶ月続けると、「ここは自分のことを見てくれている」という感覚が生まれます。5分間トークでもOKです。
採用が厳しい業界だからこそ、「入ってもらう努力」だけでなく「辞めない理由を作る努力」が必要です。そしてその根本にあるのは、4つのPの言語化と、それに対する一貫性です。

まとめ:明日からできる3つのアクション
今回は『THE TEAM 5つの法則』から、歯科医院の現場で特に効果的な3つの法則をご紹介しました。
①目標設定(Aim):数字だけでなく「なぜやるのか(意義)」「何をするのか(行動)」をセットで伝える。セカンドカウンセリングの場を活かして、目標と行動を連動させる
②意思疎通(Communication):心理的安全性の前に「ありかた」を整える。オリエンテーションで最初に共有し、定期的なありかた研修で繰り返し確認する。その土台があってこそ、安心して意見を言い合えるチームが生まれる
③共感創造(Engagement):給与は前提として整えた上で、採用の4P(Philosophy・Profession・People・Privilege)を言語化する。そして言語化したことに一貫性をもって行動し続けることが、採用にも定着にも効いてくる
そしてこの3つに共通する大事なポイントがあります。
それは、「言語化」と「仕組み化」です。
「良い人を採れば変わる」「スタッフのやる気次第」ではなく、目指す方向を言葉にし、チームが機能するための設計を院長が意識的に行うこと。これが組織の成長を左右します。
まずは明日から、1つだけ試してみてください。
- 目標を伝えるとき、「なぜその目標なのか」を一言添える
- 次のミーティングで「うちの医院が大切にしたいありかた」を話し合ってみる
- 自院の4つのP(理念・仕事・人・待遇)の強みを、それぞれ1行で書き出してみる
どれか1つだけで大丈夫です。小さな変化が、チームを変える第一歩になります。
今回の内容が1つでも参考になれば幸いです。












