しっかりペルソナ設定出来ていますか?

労務・人事評価・採用

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皆さん、こんにちは!地域一番実践会コンサルタントの太田です。

歯科医院の採用活動は、ここ数年で大きく変わりました。
少し前までは、求人媒体に掲載して待っていれば応募が来るという時代がありました。しかし、今はどうでしょうか。歯科医師の採用は以前にもにも増して難しくなる中で、歯科衛生士の有効求人倍率は依然として高止まりし、歯科助手や受付スタッフについても「良い人が来ない」という声を多くの院長先生からいただきます。
私がコンサルティングの現場で強く感じているのは、採用における「ペルソナ設定」の重要性が急速に高まっているということです。今回は、なぜ今ペルソナ設定が必要なのか、そしてどのように設定すれば採用の成果につながるのかをお伝えしていきます。

採用チャネルの多様化が進む今、求められるのは「全方位×個別化」

現在、歯科医院が取り組むべき採用チャネルは多岐にわたります。

まず、採用専門サイトの構築は、もはや必須と言ってよい施策です。

医院のホームページ内に採用ページを設けている医院は多いですが、それだけでは不十分な時代に入っています。求職者が求めている情報を網羅し、医院の雰囲気や働くスタッフの声をしっかりと伝える「採用に特化した専用サイト」を持つことが、他院との差別化の第一歩になります。
次に、InstagramをはじめとするSNSの活用です。特に20代〜30代前半の歯科衛生士や歯科助手にとって、Instagramは情報収集の主要な手段となっています。医院の日常風景やスタッフ同士の関係性、院内イベントの様子などを発信することで、求人票だけでは伝わらない「リアルな空気感」を届けることができます。
最近では歯科医師においても、Instagramを見て応募するケースも少ないように感じます。

さらに、歯科衛生士学校や歯科大学との関係性構築も超重要です。

学校の就職担当の先生との信頼関係を築き、実習生の受け入れを積極的に行うことで、卒業前の段階から自院を「選択肢のひとつ」として認知してもらうことができます。この地道な活動が、新卒採用において非常に大切になってきます。

加えて、リファラル採用、つまり既存スタッフからの紹介、つながり採用も見逃せません。実際に働いているスタッフが「この医院は良い職場だ」と思っていなければ紹介は発生しませんので、リファラル採用が機能していること自体が、医院の組織力を測るバロメーターにもなります。

そして、ジョブメドレーなどの外部求人サイトの活用も引き続き有効です。ジョブメドレーはスカウト機能を活用することで、受け身ではなくこちら側から求職者にアプローチすることが可能であり、使い方次第で大きな成果を出している医院も数多くあります。

このように、採用活動は「どれかひとつをやれば良い」という時代ではなく、全方位的に取り組むことが求められる時代に突入しています。

しかし、ここで重要なポイントがあります。
チャネルを増やすことと同時に、発信するメッセージの質を高めなければ、どれだけチャネルを広げても成果にはつながりません。そしてメッセージの質を高めるために不可欠なのが、今回のテーマである「ペルソナ設定」なのです。

「働きやすい職場です」——その言葉、他の全ての医院も言っています

私がクライアント医院の求人原稿を拝見していて、非常にもったいないと感じるケースがあります。それは、求人に記載されている内容が、どこの医院でも見かけるような一般的な表現ばかりになっているケースです。

たとえば、こんな文言に心当たりはないでしょうか。

「働きやすい環境です」「スキルが身につきます」「アットホームな雰囲気です」「残業ほぼなし」「研修制度が充実」。
もちろん、これらの情報が嘘だと言いたいわけではありません。事実として働きやすい職場であることは素晴らしいことですし、スキルが身につく環境を整備していることも大きな強みです。

ただ、問題はほぼ全ての歯科医院がこれと同じことを言っているという点です。

求職者の立場で考えてみてください。ジョブメドレーで複数の歯科医院の求人を見比べたとき、どの医院も「働きやすい」「成長できる」「人間関係が良い」と書いてあったら、何を基準に選べばいいでしょうか。結局、給与や立地といった条件面の比較になってしまい、本当に伝えたかった医院の魅力は埋もれてしまいます。

これは、まさに「全員に向けたメッセージは、結局誰にも届かない」という典型的な例です。

ペルソナを設定すると、求人の「解像度」が劇的に変わる

では、ペルソナ設定とは具体的に何をすることなのか。
ペルソナ設定とは、「自院が本当に採用したい人物像」を、年齢、経験年数、性格、価値観、ライフスタイル、転職理由に至るまで具体的に描き出すことです。

たとえば、こんなペルソナを考えてみましょう。

ペルソナ例:Aさん(28歳・歯科衛生士・経験5年目)
前職では予防歯科に力を入れている医院で3年間勤務。患者さんとの信頼関係を築くことにやりがいを感じていたが、医院の方針が「回転率重視」に変わり、一人ひとりの患者さんに向き合う時間が取れなくなったことに違和感を覚え、転職を決意。次の職場では、患者さんとじっくり向き合える環境で、自分の担当患者を持ちながら予防プログラムの運営にも関わりたいと考えている。プライベートでは一人暮らしで、通勤時間は30分以内が理想。休日はヨガや読書を楽しむタイプ。

ここまで具体的にペルソナを設定すると、求人で発信すべきメッセージが明確になります。

このAさんに届けるべきメッセージは「働きやすい職場です」ではなく、「当院では歯科衛生士一人あたりの患者枠を60分で確保しています。担当患者制を導入しており、あなたの予防計画で患者さんの口腔内が変わっていく過程を、ぜひ一緒に見届けてください」というような、具体的でAさんの心に直接響く内容になるはずです。

この求人を見たとき、予防歯科にこだわりがない人や、回転率重視の働き方が好きな人には刺さらないかもしれません。しかし、Aさんのような価値観を持つ歯科衛生士には、「ここは自分の求めていた職場かもしれない」と強く感じてもらえます。

「刺さる人が少ない求人」の方が、実は採用効率が良い理由

「ペルソナを絞ると、応募数が減ってしまうのでは?」

これは、ペルソナ設定の話をすると必ずと言っていいほど院長先生からいただく質問です。確かに、広く浅いメッセージに比べれば、ペルソナを絞った求人に反応する絶対数は減る可能性があります。

しかし、ここで考えていただきたいのは、採用におけるゴールは「応募数を増やすこと」ではなく「自院に合った人材を採用すること」だということです。

実際のところ、ペルソナを設定せずに広く浅い求人を出している医院では、こんな問題が頻繁に起きています。

まず、応募が来ても面接の段階でミスマッチが発覚し、お互いに時間を無駄にしてしまうケースです。「思っていた雰囲気と違った」「自分のやりたい診療とは方向性が合わなかった」こうした面接後の辞退は、院長先生にとっても求職者にとっても大きな労力の損失です。

さらに深刻なのは、採用後のミスマッチです。入職してから「こんなはずじゃなかった」と感じたスタッフが短期間で退職してしまえば、採用にかけたコストが無駄になるだけでなく、残ったスタッフの負担増やモチベーション低下にもつながります。いわゆる「採用の負のスパイラル」です。

一方、ペルソナを明確に設定した求人には、次のようなメリットがあります。
第一に、応募の時点でマッチ度が高い人材が集まりやすいということ。求人のメッセージが具体的であればあるほど、求職者は「自分に合っているかどうか」を応募前の段階で判断できます。つまり、「なんとなく応募した」という人が減り、「この医院で働きたい」と明確な意志を持った人からの応募が増えるのです。
第二に、面接の質が向上するということ。求職者がすでに医院の方針や特徴を理解した上で応募しているため、面接では表面的な質問ではなく、より深い話ができるようになります。お互いの価値観のすり合わせが面接の場でしっかりと行えるため、採用の精度が格段に上がります。
第三に、入職後の定着率が高まるということ。ペルソナに合った人材は、入職後の「こんなはずじゃなかった」というギャップが少なく、結果として長く活躍してくれています。採用コストの回収という観点でも、定着率の向上は歯科医院経営に非常に大きなメリットとなります。

そして第四に、既存スタッフとの相性が良い人材が集まりやすいということ。ペルソナ設定は、単に「どんなスキルの人が欲しいか」だけでなく、「どんな価値観の人が自院の文化にフィットするか」を考える事でもあります。組織として大切にしている考え方に共感してくれる人が入職することで、チームワークが自然と強化されます。

「たった一人」を思い浮かべることから始めてください

ペルソナ設定と聞くと、マーケティングの専門知識が必要で難しそうだと感じる院長先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、最初のステップは非常にシンプルです。
「今、もしもう一人採用するとしたら、どんな人に来てほしいか」を、できるだけ具体的に想像してみてください。

その人は何歳くらいで、経験年数はどれくらいで、前職ではどんな不満を感じていて、次の職場に何を求めているのか。休日はどんな過ごし方をしていて、将来のキャリアについてどんなビジョンを持っているのか。

もし想像しにくければ、過去に採用した中で「この人は本当にうちに合っていた」と感じるスタッフを思い浮かべてみるのも効果的です。その人がなぜ自院を選んでくれたのか、何に魅力を感じてくれたのかを掘り下げることで、自院のペルソナが自然と見えてきます。

そのペルソナが明確になったら、採用専門サイトのメッセージ、Instagramの発信内容、ジョブメドレーの求人文面、学校訪問時のトーク——全ての採用チャネルにおけるメッセージを、そのペルソナに向けて統一していきましょう。

まとめ:ペルソナ設定は「採用戦略の土台」

採用チャネルを増やすことは大切です。しかし、それは「手段」であって「目的」ではありません。

全方位的な採用活動の効果を最大化するためには、全てのチャネルを貫く一本の軸、すなわち「誰に届けたいのか」というペルソナ設定が不可欠です
万人受けする求人を作ろうとするあまり、結局誰の心にも残らないメッセージになっていないか。今一度、自院の求人を見直してみてください。

多くの人には刺さらないかもしれない。でも、ある特定の人には確実に届く。そんな求人こそが、結果として最もマッチ度の高い人材を引き寄せ、採用コストの削減と組織力の向上の両方を実現してくれるのです。

ペルソナ設定は、採用活動のスタートラインです。医院に必要な人財はどのような人なのか?を改めて考えるきっかけにして頂けると嬉しいです。

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