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皆さん、こんにちは!
歯科医院地域一番実践会の萩原直樹です。
また辞めると言われました。
この連絡をいただくたびに、採用そのものより、入ってからの1か月に原因があることが多いと感じます。
募集をかけて、面接をして、やっと来てくれた歯科衛生士。それが半年で辞めると、採用費も、教えた時間も、残ったスタッフの気持ちも、まとめて失われます。そして「また募集しないと」が始まります。
この記事では、歯科衛生士をはじめとするスタッフの定着率を上げるために、医院が実際に打てる手を整理します。精神論ではなく、明日から変えられることだけを書きます。
この記事でわかること
- 歯科医院の規模で、どれくらい人が辞めているのか(公的データで確認します)
- 辞める人が口にする理由と、本当の理由のズレ
- 定着率を上げる5つの打ち手
- 入職30日でやること(週ごとの具体策)
- 辞めそうなサインの見つけ方
1. まず、辞める理由を数字で見る
上位は「労働条件」と「人間関係」。給料より上に来る
厚生労働省の令和7年雇用動向調査で、転職した女性が前職を辞めた理由を見ると、個人的な事情を除いていちばん多いのは「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」で12.9%、次が「職場の人間関係が好ましくなかった」で11.5%でした。「給料等収入が少なかった」は8.6%で、その下に来ます(出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」令和8年8月31日公表 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/gaikyou.pdf )。
歯科衛生士も歯科助手も受付も、多くは女性です。この順番は、そのまま自院に当てはめて考えられます。
つまり、給料を上げれば残る、という話ではないのです。働く時間と、一緒に働く人。この2つのほうが先に効きます。
さらに20〜24歳の女性に絞ると、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」は18.8%まで上がります。入って間もない世代ほど、働き方の条件を見ているということです。
医療・福祉は、離職者数が全産業でいちばん多い
同じ調査で、医療・福祉の離職率は14.3%、入職率は14.5%でした。1年間の離職者数は1,200.2千人で、全産業の中でもっとも多くなっています。それでも入職者が1,215.2千人と上回っていますから、人は動き続けています。
就業している歯科衛生士も149,579人で過去最多です(出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の結果」令和7年7月29日公表 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/24/dl/houdou.pdf )。2年に1度の調査で、これが最新です。
人がいないわけではありません。選ばれる医院と、選ばれない医院に分かれているだけです。
そのうえ、小さい職場ほど辞めている
従業員5〜29人の事業所では、大卒の52.0%が3年以内に辞めています(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」令和7年10月24日公表 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html )。歯科医院のほとんどが、この規模です。この数字については歯科医院の採用に適性検査は必要かでもくわしく触れました。
小さい組織には、小さい組織なりの弱点があります。逃げ場がない、相談相手が選べない、教育担当が固定される、院長先生との距離が近すぎる。これは院長先生の人格の問題ではありません。だからこそ、意図して仕組みを作らないと定着しません。
2. 辞める理由は、本人の口からは出てこない
退職の申し出でいちばん多いのは「家庭の事情」「実家に戻ります」「体調が優れなくて」です。
これらが嘘だと言いたいのではありません。ただ、円満に辞めたい人は医院を責める理由を口にしません。角が立つからです。
現場で実際に起きていることは、だいたい次のどれかです。
- 教えてくれる人と合わない。やり方を聞ける空気がなく、分からないまま時間が過ぎた
- 何ができたら合格か分からない。いつまでも「まだ早い」と言われ、先が見えない
- 自分だけ扱いが違うと感じた。注意の仕方に差がある、情報が回ってこない
- 相談先がない。院長には言いにくく、先輩は忙しそうで、気づけば誰にも話していない
- 期待されている実感がない。できて当たり前、ミスのときだけ声がかかる
どれも入職後1か月で芽が出ます。そして3か月で心が決まり、半年で申し出が来ます。つまり、辞めると言われた時点では、たいてい手遅れなのです。
3. 定着率を上げる5つの打ち手
打ち手1 教育担当を「相性」で決める
いちばん効くのに、いちばん後回しにされているのがこれです。
多くの医院では、教育担当は勤続年数や手が空いている人で決まります。しかし、教えるのがうまい人と、経験が長い人は別です。さらに言えば、その新人と相性が合う人はもっと別です。
たとえば、結論から短く話す先輩と、順を追って納得したい新人。どちらも優秀でも、組ませると新人は萎縮します。「何度も聞くと怒られる」と思った瞬間、質問は止まります。質問が止まると、ミスが増えます。ミスが増えると、さらに言いづらくなる。この悪循環です。
組み合わせを変えるだけで続くようになった例を、私は何度も見ています。
打ち手2 「ここまでできたら合格」を先に決める
新人がいちばん不安なのは、終わりが見えないことです。
「まだ早い」「もう少し慣れてから」と言われ続けると、人は成長を感じられません。やるべきことは、入職時にチェックリストを渡すことです。
- 1か月目にできるようになること(例:器具の準備、ユニットの清拭、受付での取り次ぎ)
- 3か月目にできるようになること
- 半年でできるようになること
紙1枚で構いません。できたら日付を書いて、教育担当が○をつける。これだけで「自分は進んでいる」が見えるようになります。
打ち手3 毎日5分の質問タイム
「分からないことがあったら聞いてね」は、機能しません。忙しそうな先輩に声をかけるのは、新人にとって相当な勇気が要るからです。
だから時間のほうを決めてしまいます。終業前の5分、教育担当と新人が必ず向き合う。聞くことは1つでいい。「今日やってみて、やりにくかったことは何?」。
これを1か月続けるだけで、辞めかけていた人が残ることがあります。
打ち手4 タイプに合わせて褒め方を変える
褒めているのに響かない。これは褒め方が合っていないだけです。
- 結果を大事にする人には、成果と判断を認める。「あの判断が早かったから助かりました」
- 人と場を大事にする人には、みんなの前で。「患者さんが◯◯さんのおかげで安心したと言っていました」
- 周りへの気配りを大事にする人には、気配りそのものを。「後輩が、◯◯さんがいると安心だと言っていました」
- 正確さを大事にする人には、具体的・客観的に。「あの資料、数字が正確でとても分かりやすかったです」
とくに最後のタイプに「すごいね」「いいね」とだけ言っても、何を褒められたのか伝わりません。
打ち手5 1か月目に15分の面談を入れる
入職1か月のタイミングで、院長先生が15分だけ時間を取ってください。聞くことは3つです。
- 思っていたことと違った点はありますか
- いま不安なことはありますか
- 次の1か月でできるようになりたいことは何ですか
「困っていることはない?」と聞くと、たいてい「大丈夫です」で終わります。場面を具体的に聞くのがコツです。「やりにくいと感じる場面はどこ?」と聞けば、答えやすくなります。
4. 入職30日でやること
| 時期 | やること |
|---|---|
| 初日 | 院長から方針を直接伝える。教育担当を紹介し、1日の流れを渡す |
| 1週目 | 覚えることを3つに絞る。毎日5分の質問タイムを始める |
| 2週目 | できたことを具体的に伝える。チェックリストに最初の○をつける |
| 3週目 | 少しだけ任せる。失敗しても取り返せる範囲で |
| 1か月 | 院長と15分の面談。次の1か月の目標を一緒に決める |
特別なことは何もありません。ただ、決めていないと必ず流れます。診療は毎日来ますから、新人のことは後回しになります。だからカレンダーに入れてしまうのが確実です。
5. 辞めそうなサインの見つけ方
辞める前には、必ず変化が出ます。よく見られるのは次のようなものです。
- 口数が減り、休憩中の雑談に入らなくなった
- 質問が減った(分かったのではなく、聞くのをやめた可能性があります)
- 報告が遅れる、細かい確認が増える
- 遅刻や当日欠勤が増えた
- 以前は自分から動いていたのに、指示待ちになった
とくに、もともと明るく周りを巻き込んでいた人が、急に静かになったときは要注意です。黙って抱え込むタイプの方は、ある日突然「辞めます」になります。
サインに気づいたら、人前ではなく1対1で、静かな場所で話してください。「最近どう?」ではなく「ここ2週間、やりにくそうに見える場面があったけれど、どのあたり?」と、具体的に聞くことです。
6. そもそも「合う人」を採れているか
ここまで入職後の話をしてきましたが、根っこには採用の段階で相性を見ていないという問題があります。
能力が高くても、医院の風土や先輩との相性が合わなければ、力を発揮できないまま辞めてしまいます。本人にとっても不幸です。
面接でこれを見抜くのは、正直に言って難しいです。応募者は準備してきますし、相性は本人も自覚していないことが多いからです。だからこそ、仕組みで見る必要があります。
適性検査を使うと、個人の特性だけでなく、今いるスタッフとの相性まで数字で見られます。「能力は高いが、今のチームとは合わない」「別のポジションなら合う」という判断ができるようになります。
7. よくあるご質問
Q. 給料を上げれば定着しますか?
一時的には効きますが、続きません。待遇で入った方は、待遇で動きます。実際、辞める理由の上位に来るのは人間関係と成長実感であって、給与単独であることは多くありません。待遇は辞める理由を減らすものであって、残る理由を作るものではない、と考えてください。
Q. 院長が直接教えたほうが早いのでは?
最初の方針を伝えるのは院長先生の役目です。ただ、日々の指導まで院長先生が持つと、新人は聞きたいことを聞けません。評価者に「分かりません」とは言いにくいからです。教育担当を立てて、院長先生は週1回の確認に回るほうがうまくいきます。
Q. 既存のスタッフが新人に冷たいのですが。
多くの場合、既存スタッフが忙しすぎます。新人が入ると一時的に全体の手は遅くなりますから、そのぶんの余裕を先に作ってください。「最初の1か月は予約を1枠減らす」といった判断が、結果的にいちばん早く回収できます。
Q. 定着率はどう測ればいいですか?
難しく考えず、入職1年後に何人残っているかで十分です。過去3年分を数えてみてください。直近3年で採用した人数と、今も在籍している人数。この2つの数字を見るだけで、自院の現実がはっきりします。
8. 採用から定着までを一緒に設計します
私たち歯科医院地域一番実践会は、歯科医院専門の経営コンサルティング会社です。採用の設計から、入職後の受け入れ、人事評価制度の整備まで、医院の規模に合わせてお手伝いしています。
その入り口としてお使いいただけるのが、歯科医院のために作った適性検査「FIRST(ファースト)」です。スマートフォンで約10分、結果は数分。個人の特性に加えて、今いるスタッフとの相性と、入職後の接し方・育て方まで分かります。1名から・1検査3,000円(税抜)です。
使い方の資料(面接での使い方・結果の読み方)も、無料でお渡ししています。
まとめ
- 従業員5〜29人の事業所では、大卒の52.0%が3年以内に辞めている。歯科医院はこの規模
- 辞める本当の理由は、本人の口からは出てこない。芽は入職1か月で出る
- 打ち手は5つ。教育担当を相性で決める/合格基準を先に決める/毎日5分の質問タイム/タイプに合わせて褒める/1か月目に15分の面談
- 入職30日のやることをカレンダーに入れてしまう
- 急に静かになった人は要注意。1対1で、場面を具体的に聞く
- 根っこは採用。相性を見ずに採ると、入職後の努力では取り返せない
自院の定着率を、一度一緒に見てみませんか
「直近3年で何人採って、何人残っているか」。この数字を出したうえで、どこに手を打つべきかをご一緒に整理します。歯科医院の人の問題を専門に見てきたコンサルタントが、無料でお受けしています。
ほかの医院の事例は歯科医院経営の相談事例集に、人事評価の整え方は人事評価制度コンサルティングにまとめています。
出典一覧
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」令和7年10月24日公表 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html
- 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」令和8年8月31日公表 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/dl/gaikyou.pdf
- 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の結果」令和7年7月29日公表 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/24/dl/houdou.pdf









