歯科衛生士を「採る」時代から「育てる」時代へ

労務・人事評価・採用

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みなさん、こんにちは。

経営コンサルタントの井ノ上です。

歯科医院の経営において、近年もっとも深刻なテーマのひとつが採用。特に「歯科衛生士の採用難」です。

もはや単に求人募集が集まらない、というレベルではなくなっています。

以前から求人倍率は 20倍〜23倍 に達しており、1人の歯科衛生士を20以上の医院が奪い合う状態になっています。私のクライアントでも衛生士が体制的に充足していて、これ以上雇う必要がないから不安はないです、と言っている医院はないです。

このように当たり前化しつつある採用難ですが、本当に笑い事ではなくなっています。

じわじわと歯科医院経営の業績に大きくダメージを与え、予防診療体制の構築、リコールの安定化、患者満足度の向上、といった「質の高い診療」の基盤そのものを揺るがし始めています。医院単体ではなく業界全体として、根本的に手を打っていく必要があります。

衛生士学校定員割れの実情

そもそもの問題ですが、歯科衛生士の供給量が需要を大きく下回っているという構造があります。

先生方もご存知の通り、全国の歯科衛生士学校では、定員数に対する入学者数が減少傾向にあり、多くの学校で定員割れが起きています。

例えば、歯科衛生士学校の約半数(約54%)は入学定員に達していないというデータもあります。

歯科衛生士養成校 54.3%で定員割れの実態 | 全国歯科衛生士教育協議会 | 東京歯科保険医協会

この背景には、「少子化」「女性が多い職種であることによるライフイベント(結婚・出産・育児)での離職」「若者の職業選択の多様化」といった社会構造的な要因があります。しかも、入学したものの、実際は資格を取っても就業しない、あるいは短期間で離職してしまうという状況も続いているようです。これは歯科衛生士としての職業の魅力が分からないまま、辞めてしまうケースが多いということです。

衛生士を目指す人も少ない、歯科医院で働きたい人もさらに少ない状況。

このような採用の戦国時代の中で、ときどき聞かれるのが、「条件さえ上げれば採用できるのでは?」という発想です。しかし、私は現場で多くの医院を見てきた中で、

それだけでは根本解決にならないと感じています。むしろ、悪化する危険性すら感じています。給与条件を上げると、多少は募集が集まるかもしれません。ただ、その条件目当てで集まった人材は医院が求めている人材と一致するのでしょうか?また、そのようなミスマッチ人材は定着して、長い期間、医院に貢献してくれるスタッフとして成長してくれるでしょうか。

目先の採用のために給与条件を闇雲にあげてしまうと、中長期的に人件費も上がるので、将来的に医院経営そのもののが立ち行かなくリスクがあります。

条件をあげないで採用をしたい。

では、どうしたらよいのでしょうか。

医院自身が“歯科衛生士を創出する”仕組みを作る

鍵は、医院自身が“歯科衛生士を生み育て、定着させる仕組み”を持つことです。

具体的には、

・衛生士の卵をアルバイトで雇う

・患者さんから衛生士を目指す人材を発掘する

・歯科助手から衛生士を目指す人材を育成する

など、院内で歯科衛生士を創出する基盤を作ることが大切です。

私の担当するクライアントでも数名の歯科助手が、今年の4月から歯科衛生士学校に通い始めることが決まっています。最初は興味がなかったスタッフでも歯科医院で働く中で、仕事のやりがいやキャリアパスを考えた結果、歯科衛生士になりたいと決断に至るケースが少なくありません。

だからこそ、医院としてはそういった人材を育て、そして支援する存在にならないといけません。

衛生士を目指す(学校に通う)ための一番のネックは学費です。なりたい気持ちはあるけど、費用を賄いないと諦めるケースがほとんどだと思います。

歯科科衛生士学校の学費は、専門学校や大学の場合で数百万円に及びます。多くの志望者にとって、この学費負担が大きな壁となっています。

学費と助成金制度の活用

ここで活用したいのが国や自治体の教育訓練給付金制度などの助成制度です。

教育訓練給付金制度(厚労省)

教育訓練給付金
教育訓練給付金について紹介しています。

意外とこの制度を知らない先生方も多いのではないでしょうか。

この制度を使うと、一定条件を満たすことで学費の一部(場合によっては50〜70%程度)が支給されるケースもあります。これらは基本的に返還不要です。

さらに、医院側が奨学金制度や学費支援を用意し、「卒業後に医院で働くことを条件に支援する」という形にすることで、志望者にとって大きな魅力となり、入学の後押しになります。

【歯科衛生士学校3年間の費用と給付金】

以下は、歯科衛生士学校に3年間通った場合の学費の支出と、受け取れる助成金・収入を整理したものです(※あくまで参考、目安としてみてください)。

・学費総額:約250万円

・専門実践教育訓練給付金:約150万円

・教育訓練支援給付金(生活費支援):約200万円

・アルバイト収入(想定):約250万円

このように助成金と収入を組み合わせることで、実質的な自己負担は大きく軽減されます。この点は、「学費が高いから無理」と最初から選択肢から外されがちですが、

制度を正しく理解すると、現実的な進路が見えてきます。

院長が知っておくべきポイント

また、ここで重要なのは、「制度がある」という事実そのものよりも、この仕組みを医院側が理解しているかどうかです。実は次のようなことが特徴があるので、理解しておいてください。

① 学費は一括で必要だが、後から給付される

初年度・各年度の学費は一時的にまとまった支出になりますが、条件を満たせば 後日まとめて給付金が支給されます。

つまり、一時的な立て替えと医院独自の貸付・奨学金制度と組み合わせることで、

進学のハードルをさらに下げることが可能です。

② 生活費支援があることで「働きながら学ぶ」が成立する

教育訓練支援給付金は、学費だけでなく 生活費の補填 という意味合いが大きい制度です。これにより、パート勤務、歯科医院でのアルバイトと併用しながら、無理なく通学できる環境が整います。

③ 卒業後の就職で「追加給付」がある

資格取得後、一定期間内に就職すると追加の給付金が支給される仕組みもあります。

医院側から見ると、卒業、就職、定着までを見据えた制度設計がしやすくなります。

生活費支援があることで「働きながら学ぶ」

ここまで見てきたように、働きながら通える衛生士学校、国の助成金制度、医院独自の支援(奨学金・雇用保証)など、これらを組み合わせることで、歯科医院が“歯科衛生士を生み出す側”に回ることが可能になります。

採用市場が20倍を超える売り手市場の中で、経験者だけを取り合うのは限界があります。これからは、「良い人がいれば採る」ではなく「一緒に育てる前提で迎える」という発想が、医院経営の安定性を大きく左右するようになってきています。

さらに、最近は新しい学びの選択肢も増えているようです。

従来のようにフルタイムで通学する以外に、働きながら資格取得を目指せる教育支援制度やスクールが増えています。たとえば、社会人・大学生などを対象に、

仕事を続けながらでも通学や学習できるサポートがある歯科衛生士学校があります。

こうした学校では、仕事や生活の状況に合わせて学びのスタイルを柔軟に選べるようです。参考までにオンライン・オンデマンドで学べる学校として取り組まれている山口宇部新衛生士養成学校のサイトURLを添付します。ぜひご参照ください。

社会人・大学生の方へ|山口宇部新歯科衛生士養成学校
山口宇部新歯科衛生士養成学校では歯科衛生士を目指す社会人・大学生・短大生の方の受け入れをおこなっています。医療系の仕事をしたことがなくても大丈夫。入学から就職までしっかり管理・サポートします。社会人・大学生向けにオンライン説明会も予定しています。

 

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