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皆さんこんにちは!歯科医院地域一番実践会のコンサルタントの渡邊です。本日は「金利のある時代の歯科医院経営」というテーマでお伝えしてまいりたいと思います。
今回は、私がクライアントの院長先生からよくご質問をいただくテーマについて、改めて考えてみました。
「これからも医院を大きくした方がよいのでしょうか?」
「分院展開を進めても大丈夫でしょうか?」
「今後は小規模医院の方が安全なのでしょうか?」
というご質問です。
最初に私の考えをお伝えすると、小規模医院だから安全なわけでも、大規模医院だから危険なわけでもありません。
これから重要になるのは、規模以上に「どこに投資するのか」、そして「一人ひとりの生産性をどこまで高められるのか」だと考えています。

金利の前提が変わった
2026年6月16日、日本銀行は政策金利にあたる短期金利の誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました。6月17日から適用され、現在も1.0%程度となっています。これは1995年以来、約31年ぶりの水準です。
この変化は、歯科医院経営においても非常に重要だと思います。
約30年間、日本では低金利環境が続きました。
金利が低いということは、借入による投資のハードルも低くなります。
借入をしてユニットを増やす。医院を大きくする。分院を出す。人を採用する。医業収入を増やして増加した固定費と借入金を超えていく。
こうした拡大型の経営が成立しやすい環境だったとも言えます。
しかし、金利がある世界では考え方を変える必要があるのではないかと考えています。
投資そのものをやめるのではありません。
「何に投資するのかを、これまで以上に選定していく」
ということです。
金利が上昇する局面では、企業経営でも事業ごとの資金効率を見ながら投資先を選別することが重要になります。
歯科医院にも同じことが言えるのではないでしょうか。
歯科医院経営の中核事業に投資する
では、歯科医院経営にとって中核となるものは何でしょうか。
私は「診療を行う力」だと考えています。
特に今後重要になるのは、患者様から価格だけで比較されない、自費診療を支える診断力と治療技術です。
インプラントや矯正、自費補綴、またそれらを組み合わせた全顎的治療、口腔機能や成長発育まで考えた診断。
このような、簡単には他院が真似できない診療能力に投資することが大切になってくると思います。
機器への投資に関しても、いかに医院の治療技術に集中出来る環境を整えられるか、拡大出来るかという視点で考えていくことが重要です。
低金利だから、とりあえず広げる。
人が採用できたから、とりあえずユニットを増やす。
空いている物件があるから分院を出す。
ではなく、
「この投資は自院の中核となる診療する力を高めるのか」
という観点が必要になります。

大規模化のリスク
大規模医院のリスクに関して考えてみたいと思います。
大規模化するメリットとしては、規模を活かして様々な費用を抑えたり、利益が積み上がることで教育効果を高めたり、マーケティング費用を捻出し医院の認知度を高める事が出来たりとたくさんのメリットがあります。
ただ、規模が大きくなるほど、一度増えた固定費は短期間で下げることが難しくなります。
例えば、上場企業のような大企業の中には1年で経営環境が急激に悪化することがあります。
わかりやすい例で考えますと、2010年にJALが経営破綻をしてしまった事が過去にありました。
JALの2009年度第1四半期を見ると、営業収益(売上)は前年同期の4,903億円から3,348億円へ約32%減少しました。
一方で営業費用は4,864億円から4,210億円へ約13%しか減少せず、営業利益39億円からたった1年で営業損失861億円へ急激に悪化しました。
上場企業の決算などを見ていますと1年単位で赤字に転落するということは非常に多く、考えてみると当たり前ではありますが急には下げる事が出来ない固定費が大きく影響しています。
もちろん、歯科業界は全く別物ではありますが、大規模化のリスクというのはこの固定費が大きくなった際に、急激な市況の変化への対応が難しくなるという事が考えられます。
歯科医院の場合は、市況はじわじわと変化していく特徴があるためそこまで劇的な変化は起こりにくいと言えます。
歯科医院経営が一気に変わる場合
しかし下記のような場合は一気に経営環境が変化します。
- 代診の先生が退職、あるいは休職に入る
- DRに限らずスタッフの離職が続く
- 自費率が高い医院の近隣に自費診療に強い医院が出現する
- 自費の価格が外部要因によって低下していく
- 診療報酬の改定などによって保険点数が低下する
歯科医院は人の影響力を大きく受けるため、定着や他医院に負けない教育の観点が非常に重要になってくると考えています。
また、自費に大きく依存している場合、その自費診療が他の医院では出来ない技術で行われているかという観点を確認いただけると良いと思います。
矯正に関してはマウスピース矯正の出現によって、矯正の単価は以前より低下してきています。今後も技術革新が続いた場合、更に低下することも考えられます。
もちろん技術革新によって利益率も改善されることがあるかもしれません。
しかし大元の金額が低下すれば利益金額も低下します。それが固定費を超えられるかどうかが鍵となってくると考えています。
小規模の歯科医院経営も安全ではない
一方で、小規模医院なら安全かというと、私は決してそうではないと思います。
例えば歯科衛生士2人の医院で、1人が産休・育休に入ったらどうでしょうか。
メンテナンスを担当する人員の半分が一時的に抜けることになります。
大規模医院でも複数人が同時に休業するリスクがもちろんありますが、小規模医院では「一人が抜ける影響」が極端に大きくなります。
つまり、大規模医院には固定費が大きくなるリスクがあり、小規模医院には一人への依存度が高くなるリスクがあります。
どちらにしても、歯科医院経営に必要な観点はどのような事でしょうか?
それは、固定費をなるべく抑え、医業収入を高める。
つまり医院全体の生産性を高めることです。

低賃金時代も変わる
そして金利と同時に変わっているのが、人件費です。
2026年版中小企業白書でも、中小企業では約30年ぶりの高い賃上げ水準が続いており、人手不足は今後さらに深刻化する可能性があると指摘されています。
そのうえで、持続的な賃上げと人手不足への対応には、労働生産性を高めることが不可欠だとされています。
私は、この変化を歯科医院経営でも重く考える必要があると思っています。
人件費が低かった時代には、
人を採用する。
人数を増やす。
医業収入を増やす。
という方法でも成長できました。
しかし、これからは異なると考えています。
人を採用して解決するだけではなく、教育や仕組み、AIなどを活用し、同じ人数でもこれまで以上の治療価値を提供できる組織体制にしていく必要があります。
人への投資と定着
だからこそ、私はこれからの歯科医院経営で最も重要になる投資の一つが「人への投資」だと考えています。
良い人材を採用する。
入社した人を教育する。
歯科医師の診断力、治療技術を高める。
歯科衛生士のできることを増やす。
受付や歯科助手の業務を整理して効率化する。
AIやデジタルを活用して、人にしかできない仕事へ時間を移す。
こうした取り組みです。
給与を上げないという話ではありません。
むしろ人件費が上がるのであれば、その人がさらに成長し、患者様へ提供できる価値も高くなる状態を作ることが重要です。
先ほどもお伝えいたしましたが、歯科医院は人への依存度が非常に大きく1人あたりの仕事の生産性は驚くほど異なります。
そのためには教育が必要です。
人は採用しただけでは戦力にはなりません。
先生の医院に必要な診療技術、考え方、患者様への関わり方を伝え、経験を積ませ、振り返りを行いながら、一人ひとりのできることを増やしていく。
これこそが今後の大きな経営投資ではないでしょうか。

拡大の順番を変える
これからの歯科医院経営では、
借入を増やす。
人を増やす。
設備を増やす。
医院を増やす。
ことを先に考えるのではなく、
まず中核となる診療技術を磨く。
人材を教育して定着を実現し、
一人当たりの生産性を高める。
院長先生以外のDrでも高い診療品質を再現できるようにする。
スタッフ一人ひとりのできることを増やす。
そこから生まれた利益とキャッシュを、さらに人と中核事業へ投資する。
その状態が再現できてから借入などを行い規模を広げる。
この順番が大切だと考えています。
低金利と低賃金を前提に、人と設備を増やして成長する時代から、
「何に投資するのかを選び、人を育て、一人ひとりの生産性を高める時代」
へ確実に変わってきています。
だからこそ大規模か小規模かではなく、自院の中核となる診療力は何なのか、その診療力を担う人材をどのように育てるのかを改めて考えていただくことが重要です。
人への投資と教育を積み重ねることが、結果として環境変化に強い医院経営につながっていくと私は考えています。
先生の医院が更に良くなることを心より願っております。
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