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組織の成長を支える「新しい鏡」としての可能性
みなさん、こんにちは!
歯科医院地域一番実践会チーフディレクターの萩原直樹と申します。
今回は最近問い合わせが多い360度評価に関してお伝えをいたします。
これからの歯科医院に求められるもの
歯科医院の経営において、以前は「技術がある」「清潔で新しい」「立地が良い」といった要素が主な競争力でした。でも今、それだけでは患者さんには選ばれない時代になってきました。
医院の中で働くスタッフが心からの笑顔で対応し、チームとしての一体感を持ち、雰囲気の良さが空気として伝わるような医院こそが、地域から信頼される存在になります。
そんな中で、見過ごされがちだけれど実は非常に大切な視点が「人と人との関係性をどう育てるか」です。スタッフとの信頼関係を築き、個々のやる気を引き出すには、単なる指導や注意だけではうまくいきません。そこで、360度評価のような新しい仕組みがひとつのヒントになるのではないかと、私は考えています。
360度評価とは何か? そしてなぜ歯科医院に必要なのか?
360度評価とは、ひとりの人間を、チーフだけでなく、同僚、部下、時に他職種など複数の方向から評価する仕組みです。もともとは一般企業のマネジメント層に対する人材育成手法として発展してきました。
では、なぜこの評価手法が歯科医院にとっても意味を持ちうるのか。
それは、医院という場が非常に「関係性」によって成り立っているからです。
院長とスタッフ、スタッフ同士、受付と患者、歯科衛生士と歯科助手、それぞれが密接につながって日々の診療が進んでいます。
その中で、ちょっとしたすれ違いや誤解、感情のひっかかりが積み重なると、医院全体の雰囲気にまで影を落とすことがあります。
360度評価は、そうした「見えづらい関係性の質」を照らす鏡のような役割を果たしてくれる可能性があります。
歯科医院での導入における課題と注意点
ただし、360度評価をそのまま企業と同じように持ち込んでも、うまくはいきません。
歯科医院は多くの場合、10人以下の少人数で運営されています。評価する人とされる人の距離がとても近く、なおかつお互いの性格や価値観をよく知っている。だからこそ、評価内容がダイレクトに人間関係に影響する可能性もあります。
たとえば、あるスタッフが真摯にフィードバックを書いたとしても、それが誰からかバレてしまえば、職場の空気がピリッとしてしまうこともあるんです。
このようなデリケートな部分を無視して、制度だけを形式的に導入すると、スタッフの信頼を失ってしまう危険さえあります。
また、「評価される」と聞くだけで、身構えてしまうスタッフも少なくありません。
これまであまりフィードバックを受ける機会がなかった人にとっては、自分がジャッジされるような怖さがあるものです。
だからこそ、360度評価を導入する際には、「何のためにやるのか」「誰のための仕組みなのか」を、きちんと伝えることがとても大切になってきます。
【実際の導入事例】振り返りの文化が育つ現場から
私がサポートしているある歯科医院では、360度評価の仕組みを数年前から導入しています。
ただし「評価」という言葉は一切使っていません。代わりに「成長サポート」「考課」といった、もう少し柔らかく前向きな表現をしています。
半年に一度、匿名のフィードバックを全スタッフに実施し、それを第三者である私が集計。
誰が書いたのか分からないように配慮したうえで、まずは院長にだけフィードバックを共有します。
その中には、それぞれのコミュニケーションのクセや、日々の声かけの影響、スタッフ間の温度差など、なかなか直接は伝えられないけれど、組織にとって重要な示唆がたくさん含まれています。
最初はおそるおそるだったスタッフも、年々フィードバックの質が上がり、いまではとても率直で温かい内容が増えてきました。
それによって、院長もスタッフも、互いの気持ちを想像する力がぐんと育ったように感じています!
360度評価の本質とは何か?
360度評価の本当の価値は、「人を評価すること」ではなく、「人を理解しようとすること」にあると私は思っています。
誰かの行動や言葉の背景には、必ずその人なりの理由や価値観がある。それを無視せずに、寄り添いながらフィードバックするという文化を、少しずつ育てていく。そうすることで、医院というチームは強く、相互補完する形で成長していきます。
そして何よりも重要なのは、それぞれがフィードバックを受け取る機会を持つこと。
「それぞれ未完成な存在だからこそ一緒に成長していきたい」
そういう姿勢をお互い持つことでで、医院の空気は驚くほど変わっていきます。
360度評価は「導入すること」が目的ではない
360度評価は、導入するだけで劇的な変化が起きるような魔法の道具ではありません。
でも、それを通じて「もっと良い医院にしていきたい」「もっと仲間を大切にしたい」という気持ちを形にしていくことは、必ず現場に変化をもたらします。
大切なのは、評価の点数や項目ではなく、その過程の中でどれだけ相手に寄り添い、自分自身を振り返る時間が持てたかどうか。
その繰り返しが、気づきを生み、成長を呼び、信頼を育てていきます。
360度評価は、そういう変化の「きっかけ」として、歯科医院でも十分に活用できると思います。
ご相談したい方はお気軽にご連絡ください。