このブログは約 6 分で読めます
こんにちは、地域一番実践会の吉村です。
海外、特に歯科医療先進国の歯科事情を知ることで、日本の歯科が今後どうなっていくのかという将来予想の手がかりになることがあります。
そこで今回は、中国についに歯科衛生士が誕生したことについてお話ししたいと思います。
※といっても1年以上前になりますが、経過も含めてお話していきます。
中国の予防歯科の普及度合いについて
2024年5月に歯科衛生士(口腔衛生技師)制度が創設されました。
中国では今まで歯科衛生士がいなかったので、これは大きいことなのではないでしょうか。
まずは、中国に歯科衛生士(口腔衛生技師)が誕生した背景から見ていきましょう。
中国は日本と比べて予防歯科への意識が低く、10年ほど前に実施された第4回全国口腔健康疫学調査によれば、5歳児の乳歯う蝕有病率は約70.9%だったようです。
ちなみに、日本では、平成元年で3歳時のう蝕有病率は約60%でした。中国は5歳でのデータなので年齢は異なりますが、予防歯科の普及としては日本と比較すると結構遅れているのが現状かと思います。
歯科衛生士(口腔衛生技師)制度の創設の背景
日本では、厚労省が出している「歯科治療の需要と将来予想(イメージ)」にて、2011年には虫歯予防を掲げ、2017年には歯周病予防が追加され、今では口腔機能の管理が入ってきておりますね。
日本の「歯科治療の需要と将来予想(イメージ)」のように、中国では「健康口腔行動方案」や「健康中国2030」というのがあります。
そこには、治療中心から予防中心にシフトし、12才児のう蝕有病率を30%まで下げること、高齢者の残存歯数を増やすことなどを目標にすることが記載されています。
そして、小児のう蝕有病率を下げるために、予防としてシーラント処置やフッ素塗布、歯面清掃を定期的に実施するという指針もあります。
そして、それを実施しようとすると歯科医師だけでは人員の不足が考えられます。
そこで必要になるのが歯科衛生士の存在です。
中国でも、スケーリングやフッ素塗布は歯科助手が行うと違法行為にあたります。そのため、日本では歯科衛生士にしてもらうことが多いようなスケーリングやSRP、フッ素塗布なども、中国では歯科医師が行う必要があります。
しかし、中国が掲げている「健康口腔行動方案」や「健康中国2030」を考えると、歯科医師だけでは人員が不足します。
日本でも、歯科衛生士がいなければ診療の効率・予防処置の診療人数が大幅に下がるのは先生もすぐに感じるところではないでしょうか。
こういった背景で、中国にも歯科衛生士制度が創設されました。
以前から歯科衛生士という職種の確立は声にあがっていたので、ついに制度としてできたことは、中国での予防歯科の普及の大きな一歩になりそうですね。
現時点では実際に資格を持っている方は1人もいません。
中国で歯科衛生士になるためには、日本のように3年制の学校を出て国家試験に合格する必要があるので、まだ在学生のみです。
しかし、中国の学校において、歯科衛生士学科がどんどん新設されているので、歯科衛生士が職業としての確立がされていけば人気の職種になるかもしれませんね。
ちなみに、中国の歯科衛生士が行ってもよい業務範囲としては、スケーリングやルートプレーニング、プラークの染め出し指導、フッ素塗布、シーラント、ホワイトニング、口腔がん検査補助、矯正・インプラント後の口腔清掃管理、歯科医師の診療補助、疫学調査への参加、保健指導などです。
日本よりは少ないと思いますが、とはいえほとんど変わらないように感じますね。
※アメリカでは歯科衛生士による診断が認められている州もありますので、国によってまちまちです。
最後に
中国において歯科衛生士制度が創設され、整備され始めたことは、まさに「治療中心から予防中心へ」という世界的な流れの一環です。
日本ではすでに歯科衛生士が大活躍し、予防歯科の普及・浸透にかかせない存在として確立されています。
そして、これからさらに高齢者の口腔機能管理や在宅での口腔ケア、医歯薬連携といった役割が広がっていくかと思います。
中国の変化を見ていると、日本の歯科衛生士もまた、社会のニーズに応じてより一層存在感を増していきそうですね。
また機会があれば海外の歯科事情を発信していきたいと思います。