「歯科医院のマネジメントを数値化する時代へ」

スタッフ教育

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歯科医院地域一番実践会の五十嵐です。

「最近、スタッフの雰囲気が少し悪い気がする」「以前よりも、スタッフから意見が出なくなった」「退職者が出てから振り返ると、そういえば少し前から様子がおかしかった」

コンサルティングの現場で院長先生とお話をしていると、このような話を聞くことがあります。

しかし、ここで一つ考えていただきたいことがあります。

その「なんとなく感じている違和感」を、院長先生はどこまで正確に把握できているでしょうか。

売上や患者数であれば、毎月数字で確認します。新患数、キャンセル率、自費率、リコール率など、歯科医院経営では多くの数字を見ながら改善を行います。

ところが不思議なことに、スタッフの状態や組織の状態になると、急に「感覚」で判断してしまう医院が少なくありません。

しかし現在は、マネジメントについても数値で把握できる時代になってきています。

その一つとして、現在私たちも一部の医院で試験的に取り組んでいるのが「パルスサーベイ」です。


1.経営数字は見るのに、組織の数字は見ていない

例えば、売上が先月より下がっている、新患数が減っている、自費率が落ちている、キャンセル率が上がっている。

このような数字が出れば、多くの院長先生はすぐに原因を考えると思います。

「なぜ下がったのか?」「どこに問題があるのか?」「何を改善すればいいのか?」

数字があるからこそ、問題を早く発見し、対策を考えることができます。

では、スタッフマネジメントについてはどうでしょうか。

「最近、スタッフ同士の空気が悪い気がする」「主任が疲れているように見える」「以前よりスタッフの発言が減った気がする」

多くの場合、この「気がする」という状態で止まってしまいます。

そして問題が表面化したときには、「突然退職の相談をされた」「スタッフ同士の関係が悪化していた」「院長への不満が溜まっていた」といったことが起こります。

しかし、実際には本当に“突然”起きたのでしょうか。

多くの場合、その前から小さな変化は起きています。ただ、それを把握する仕組みがなかっただけかもしれません。


2.パルスサーベイとは何か?

パルスサーベイとは、スタッフに対して短いアンケートを定期的に行い、組織やスタッフの状態を継続的に確認する仕組みです。

年に1回行うような大規模な満足度調査とは異なり、短いスパンで繰り返し確認することに意味があります。

例えば、

  • 医院で働くことにやりがいを感じているか
  • 上司や院長に相談しやすいか
  • 自分の役割を理解できているか
  • 医院の方針を理解できているか
  • 職場で成長を実感できているか

こうした項目を定期的に確認していきます。

すると、「先月より数値が下がっている」「この項目だけ継続的に低い」「特定の項目に変化が起きている」といったことが見えるようになります。

つまり、スタッフの状態を「感覚」だけではなく、「数値の変化」として捉えることができるようになります。

現在、私たちも一部の医院で試験的に実施しながら、どのような項目が実際のマネジメント改善につながるのかを検証しています。


3.重要なのは「点数」ではなく「変化」

パルスサーベイを行うと、「何点なら良い医院なのですか?」という話になりがちです。

もちろん一定の基準を見ることも重要ですが、それ以上に重要なのは、前回からどう変化したのかを見ることだと考えています。

例えば、ある項目が80点だった医院が70点になったとします。

70点だけを見れば、それほど悪く感じないかもしれません。しかし、

80点 → 76点 → 72点 → 70点

と3か月連続で低下しているのであれば、組織の中で何らかの変化が起きている可能性があります。

反対に、

50点 → 55点 → 62点 → 68点

と推移しているのであれば、何らかの取り組みによって組織の状態が良い方向へ向かっている可能性があります。

つまり、マネジメントでも「今何点なのか」だけではなく、「どちらに向かっているのか」を見ることが重要なのです。

これは、売上や新患数を見るときと同じ考え方です。


4.数字を見ることで、マネジメントの状態も見えてくる

ここが、私が特に重要だと考えているポイントです。

パルスサーベイは、単に「スタッフが満足しているか」を調べるものではありません。

例えば、「相談しやすさ」が継続的に低い。「医院方針への理解」が下がっている。「自分の役割が分からない」という回答が増えている。「成長実感」が低くなっている。

このような変化が見えてきた場合、スタッフ側だけに原因があるとは限りません。

院長先生からの情報発信が不足しているのかもしれません。役割分担が曖昧なのかもしれません。スタッフとのコミュニケーション量が減っているのかもしれません。評価やフィードバックの機会が不足している可能性もあります。

つまり、スタッフの状態を継続的に数字で追っていくことで、結果として医院のマネジメント状態を考える材料にもなります。

「マネジメント」という目に見えづらいものについても、少しずつ数値を使って捉えることができる時代になってきたということです。


5.院長とスタッフの認識は、必ずしも同じではない

組織づくりについてお話しすると、「うちはスタッフ同士の仲がいいから大丈夫です」「うちのスタッフは何かあれば言ってくれます」と話される院長先生もいらっしゃいます。

もちろん、本当に良い関係性が築けている医院もたくさんあります。

しかし、コンサルティングをしていると、院長先生が認識している状態と、スタッフが感じている状態に差があるケースもあります。

院長先生からすると「何でも言える医院」だと思っていても、スタッフからすると「言っても変わらない」「忙しそうだから言えない」「わざわざ言うほどではない」と感じている可能性があります。

こうした認識の違いは、普段の診療中だけではなかなか見えません。

だからこそ、院長先生の感覚だけに頼るのではなく、定期的に組織の状態を確認する仕組みを持つことが重要だと考えています。


6.売上管理と同じように、マネジメントも定点観測する

私はこれからの歯科医院経営では、売上や患者数と同じように、組織状態についても定期的に確認していくことが重要になると考えています。

これまでのマネジメントは、院長先生の経験や感覚に大きく依存してきました。

もちろん、人を見る力やコミュニケーション能力はこれからも非常に重要です。しかし、経験や勘だけでは拾えない小さな変化もあります。

だからこそ、

「感覚」+「数値」

で見る。

売上を見る。患者数を見る。キャンセル率を見る。自費率を見る。そして、スタッフや組織の状態も見る。

経営数字と組織の状態、その両方を定点観測することが、これからの医院マネジメントには必要になってくるのではないでしょうか。


7.数字が見えると、改善策を考えやすくなる

マネジメントというと、「コミュニケーション能力」「人間力」「リーダーシップ」といった、非常に抽象的な言葉で語られることが多くあります。

そのため、「自分はマネジメントが苦手だから仕方がない」「人を動かすのは難しい」と考えてしまう院長先生もいます。

しかし、状態をある程度数値で捉えることができれば、改善策を考えやすくなります。

例えば、「医院方針の理解」が低ければ、方針を伝える機会や伝え方を見直す。「相談しやすさ」が低ければ、面談や1on1の方法を検討する。「成長実感」が低ければ、教育や評価、フィードバックの仕組みを見直す。

このように、状態が見えることで「何を変えるのか」を考えやすくなります。

現状を把握し、仮説を立て、施策を実行し、もう一度数値を見る。

実は、このサイクルはマーケティングと非常によく似ています。

広告を出したら、問い合わせ数を見る。ホームページを変えたら、アクセスやコンバージョンを見る。そして結果をもとに、次の施策を考える。

マネジメントについても、同じような考え方ができるのではないかと考えています。


8.人を数字だけで判断するという話ではない

もちろん、誤解していただきたくないのは、人を数字だけで判断しようという話ではありません。

スタッフ一人ひとりには感情があります。価値観があります。家庭環境も違えば、仕事に求めているものも違います。

最終的には、一人ひとりと向き合うことが必要です。

ただし、その「向き合うきっかけ」を数字から見つけることはできます。

「何となく最近元気がない気がする」で終わるのではなく、「ここ数か月、この項目が下がっている」と分かれば、少し早い段階で状況を確認することができます。

問題が大きくなってから対応するのではなく、小さな変化の段階で気づく。

そのための一つの方法として、私たちは現在パルスサーベイの活用を試験的に進めています。


9.マネジメントも「見える化」する時代へ

歯科医院経営では、これまで多くのものが数値化されてきました。

売上、患者数、新患数、自費率、キャンセル率、リコール率など、さまざまな数字をもとに医院経営を改善しています。

そして今後は、スタッフや組織の状態についても、数字を参考にしながらマネジメントしていく流れがさらに進んでいくのではないでしょうか。

もちろん、数字だけですべてが分かるわけではありません。

しかし、何も見えない状態でマネジメントするのと、変化を数字で捉えながらマネジメントするのとでは、気づけることが変わります。

「最近、医院の雰囲気はどうだろう?」

「スタッフは本当に医院の方針を理解しているだろうか?」

「院長として、自分のマネジメントは機能しているだろうか?」

こうした問いに対して、「たぶん大丈夫」で終わらせるのではなく、数字という一つの材料を持ちながら考える。

これからの歯科医院経営では、そのようなマネジメントがより重要になっていくと考えています。

私たちも現在、一部の医院でパルスサーベイを試験的に実施しながら、どのような数値を見れば組織の変化を捉えやすいのか、そしてどのように医院改善につなげていくのかを検証しています。

「問題が起きてから対処するマネジメント」から、「変化を捉えて、早い段階で改善するマネジメント」へ。

マネジメントについても、感覚だけに頼るのではなく、数値を活用する時代が少しずつ始まっているのではないでしょうか。

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投稿者

地域一番ディレクター 五十嵐 康浩
地域一番ディレクター 五十嵐 康浩
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