確実に成果を出すための「目標設定」とそのプロセス

歯科医院経営ブログ

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こんにちは!歯科医院地域一番実践会の三日市です。
今年一年、皆様はどんな年だったでしょうか?「色々な取り組みが進められた!」「思うように結果が出なかった…」等振り返りをし始めている時期かと思います。
振り返り後は来年の目標を立てていかなければなりません。今回はそんな「目標」について詳しくお話していきます。

日々の診療に追われ、なんとなく「売上を上げたい」「患者さんを増やしたい」と考えてはいるものの、具体的な道筋が見えないまま月日が過ぎていく……。そんな悩みを抱えている院長先生は少なくありません。

歯科医院の経営において、技術の研鑽と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「正しい目標設定」です。しかし、ただ数字を掲げるだけでは目標は達成されません。大切なのは、その目標が「医院の現状に即しているか」そして「日々の行動に落とし込まれているか」です。

本記事では、机上の空論ではない、現場に基づいた実現可能な目標設定のプロセスと、それを達成するための具体的な思考法について、7つのステップに分けて詳しく解説していきます。

目次

  1. 揺るぎない「大目標」がすべての起点になる
  2. 「実現可能性」の検証
  3. 未来から現在への逆算
  4. 「率」と「実数」の考え方
  5. 季節変動の波を読む
  6. 毎月の振り返り(PDCAサイクル)
  7. ブレない軸が組織を強くする

 

  1. 揺るぎない「大目標」がすべての起点になる

経営における目標設定の第一歩は、細かい数字の積み上げではありません。まずは「この医院をどうしたいのか」という、定性的かつ長期的な「大目標(ビジョン)」を掲げることから始まります。

「地域で一番愛される予防歯科医院にする」「自費率を高めて、一人ひとりの患者さんに時間をかけた診療を行う」「分院展開をして組織を拡大する」。これらはすべて立派な大目標ですが、向かうべき方向は全く異なります。

この大目標が決まっていないと、目先の売上目標が単なる「ノルマ」になってしまいます。スタッフさんにとっても、院長先生がなぜその数字を目指しているのか、その先にどんな景色があるのかが見えなければ、モチベーションは続きません。「なぜ、その山に登るのか」を明確にすること。これが、ブレない経営の土台となります。まずは1年後、3年後、そして10年後の医院の姿を鮮明にイメージし、言語化することから始めてください。ここが曖昧だと、後のプロセス全てが空回りしてしまいます。

  1. 「実現可能性」の検証:リソースと環境の棚卸し

大目標が決まったら、次に行うのは冷静な「現状分析」です。夢を語ることは大切ですが、経営は現実との戦いです。設定しようとしている数値目標が、物理的に可能なのかを検証しなければなりません。これを無視した目標は、スタッフさんを疲弊させ、組織崩壊を招く原因になります。

検証すべき要素は以下の5つです。

  1. チェア台数:物理的な診療枠の限界はどこか。フル稼働した時の最大売上はいくらか。
  2. 期間:いつまでに達成するのか。採用や教育にかかるリードタイムは考慮されているか。
  3. 人員構成:歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付の人数とスキルレベルは十分か。誰がどの処置を担当できるのか。
  4. 立地:医院の周辺人口、競合の状況、ターゲット層(ファミリー層、高齢者層、ビジネス層など)は目標と合致しているか。診療時間は正しく設定されているか。
  5. 診療科目:保険診療中心か、自費診療を伸ばすのか。自費が中心であるならば、具体的にどの治療で伸ばしていくのか。

例えば、チェアが3台しかなく、歯科衛生士も1名という状況でメンテナンス中心で年間1億円を目指すのは、物理的に無理があります。この場合、自費を中心にしていく、あるいは移転や増築、採用といった投資を行うかという判断が必要になります。「根性論」ではなく、「キャパシティ」から目標の妥当性をジャッジすることが、経営者にとって重要な判断となります。

 

  1. 逆算思考:未来から現在へ時間を巻き戻す

実現可能なラインが見えてきたら、次は具体的な数値計画への落とし込みです。ここで重要なのが「逆算思考」です。積み上げ式で「今月これだけできたから、来月はもう少し頑張ろう」と考えるのではなく、ゴールから逆算して「今日やるべきこと」を決定します。

プロセスは以下の通りです。

  • 年間目標:まずは年間の医業収入目標を決定します。(例:1億円)
  • 月間目標:年間目標を月ごとに配分します。(例:平均月834万円)
  • 日間目標:月間目標を診療日数で割り、1日あたりの必要売上を算出します。(例:診療日20日なら、1日42万円)

このように細分化していくことで、漠然としていた目標が、急に現実味を帯びてきます。「年間医業収入1億円」と言われるとイメージできなかったアポイントの埋め方や、自費提案の件数などが、「1日25万円」と言われれば、具体的にイメージできるようになるのです。

この逆算プロセスを経ることで、今日のアポイントに空きが出た時、「まあいいか」と流すのか、「目標まであと2万円足りないから、キャンセル待ちの患者様に連絡しよう」と考えるのか、行動の質が劇的に変わります。

  1. 「率」の罠:現場を動かすのは「実数」である

目標管理において、多くの院長先生が陥りがちなのが「率(パーセンテージ)」への過度なこだわりです。「自費率30%」「リコール率80%」「キャンセル率5%以下」。これらの指標はもちろん重要ですが、日々の現場運営において、スタッフさんの行動を変えるのは「率」ではなく「数」です。

例えば、「今月の自費率を20%から25%に上げよう」と朝礼で伝えても、スタッフさんは何をすればいいのか直感的に分かりません。しかし、「今月はあと5人、自費の補綴を選んでもらえるように説明に力を入れていこう」と伝えれば、具体的な行動が見えてきます。

また、経営の安全性という観点からも実数は重要です。患者数が激減して売上が下がっても、たまたま高額な自費が1件出れば「自費率」は跳ね上がります。これを見て「経営状態が良い」と判断するのは危険です。 家賃や人件費などの経費は、パーセンテージではなく「円(金額)」で支払います。したがって、目標設定やモニタリングは、必ず「患者数」「自費契約件数」「売上金額」といった実数をベースに行いましょう。「率」はあくまで結果を分析するための指標であり、行動目標には「数」を置く。これが鉄則です。

 

  1. 季節変動の波を読む:12ヶ月は均等ではない

年間目標を12ヶ月で単純に割って月間目標を設定すると、現場に無用なプレッシャーを与えたり、逆に気の緩みを生んだりします。なぜなら、歯科医院の経営には明確な「季節指数(季節トレンド)」が存在するからです。

自院の過去3年分ほどのデータを集計し、「どの月が強く、どの月が弱いか」を把握してください。 例えば、「12月はボーナス時期もあり自費が出やすいから目標を高めに設定する」「2月は日数が少ないので、無理な目標は立てず、アポイント密度を高めることに集中する」といったように、季節ごとの波に合わせた目標配分を行うことが重要です。無理な月には無理をさせず、勝負すべき月に一気に動く。このメリハリが、スタッフさんの疲弊を防ぎ、年間達成率を高めるコツです。

 

  1. 毎月の振り返り:軌道修正のPDCAサイクル

目標は立てて終わりではありません。むしろ、立てた後が本番です。必ず毎月一度、時間を確保し、数値の集計と振り返り(レビュー)を行ってください。

ここでは、「達成したか、未達だったか」の結果確認だけでは不十分です。「なぜそうなったのか」の原因分析が不可欠です。

  • 未達の場合:新患が少なかったのか、キャンセルが多かったのか、自費が決まらなかったのか、あるいは診療日数が足りなかったのか。
  • 達成の場合:何が良かったのか。特定のスタッフさんの動きが良かったのか、どの取り組みの効果が出たのか。

数値を計測し続けていると、医院の「勝ちパターン」と「負けパターン」が見えてきます。 「新患が月30人を下回ると、翌月のレセプト枚数に響く」といった法則が見えれば、早めに対策を打つことができます。やりっ放しにせず、毎月の数値を直視し、翌月の行動計画(アクションプラン)に反映させる。この地道なPDCAサイクルこそが、目標達成への最短ルートです。

  1. 初志貫徹:ブレない軸が組織を強くする

最後に、最も重要な心構えをお伝えします。それは、最初に掲げた「大目標」を、院長先生自身が絶対にブラさないことです。

経営を続けていれば、予期せぬトラブルは必ず起きます。スタッフさんの急な退職、近隣への競合医院の開業、ユニットの故障……。心が折れそうになる瞬間もあるでしょう。 しかし、状況が悪くなったからといって、安易に目標を下方修正したり、方針をコロコロ変えたりしてはいけません。リーダーが迷えば、スタッフさんはさらに不安になります。

「我々はこの山を登ると決めた。ルートは変更するかもしれないが、頂上を目指すことには変わりない」。そう言い切れる強さが、組織をまとめ上げます。 もちろん、戦略や戦術は柔軟に変えるべきです。しかし、戦略の上位にある「目的・目標」は、動かさないでください。院長先生がその目標を信じ抜き、毎月、毎日、やるべきことを1個ずつ着実に遂行していくことが大事なのです。

 

まとめ

歯科医院経営における目標設定は、医院の未来を創り、スタッフさんを守り、患者様に最良の治療を提供し続けるための「約束」です。

本ブログで示しているプロセスを愚直に実行すれば、必ず結果はついてきます。 年末が近づき、今年の振り返り、来年の目標設定をしていく時期かと思います。ご自身の医院の「大目標」を一度考え、そのうえで来年の目標を設定してみて下さい。。
医院の目標設定、方向性に迷われている先生は是非、弊社の無料経営相談をご検討下さい。

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