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集患、採用、自由診療の導入や拡大、そして価格戦略やブランディング。どれを取っても、感覚だけで判断していては成果が出にくい時代です。こうした変化の中で、歯科医院経営においてますます重要度を増しているのが、「競合分析」という視点です。
■ なぜ競合分析が必要なのか?
競合分析とは、自院の近隣にある歯科医院(同業他院)の情報を収集・比較し、自院との違いやポジショニングを明確にするための取り組みです。どこかのリサーチ会社に高い費用で依頼して、対策を講じた方が良いという提案でなく、できる範囲で調査して、小さくても行動に移すことです。大切なのは、“主観的な印象”ではなく、“客観的なデータ”に基づいて判断・行動することです。
たとえば、マウスピース矯正を提供する医院では、患者が「矯正を受けたい」という明確な目的を持って検索してくるケースが多く見られます。そうした患者は、「通いやすさ」以上に、「価格」「口コミ」「症例」「肩書」といった具体的な比較項目をもとに、複数医院を見比べたうえで選びます。
このような選択行動が一般化している今、自院の魅力や強みを明確に提示できなければ、競合に流れてしまうリスクは高まってしまいます。
■ 経営フレームワークで考える競合分析(3C分析)
競合分析を効率的に行うために、ビジネスの世界では「3C分析」という基本的なフレームワークが使われます。これは以下の3つの視点で、自院の立ち位置や方向性を検討するものです。
- Customer(顧客)
患者のニーズ、地域性、年齢層、来院動機など - Competitor(競合)
近隣医院の診療内容、価格帯、口コミの質と量、SNS活用の有無など - Company(自院)
自院の提供価値、スタッフ体制、設備、診療方針、接遇、診療システムなど
この3つの要素を切り分けて比較・分析することで、「自院がどのポジションにいて、どこで勝負すべきか」が少しずつハッキリしてきます。
■ 競合分析は何を見ればいいのか?具体的なチェックポイント
歯科医院の経営において注目すべき「競合の動き」は、大きく2つの分野に分かれます。
【1】自由診療における競合分析
とくにマウスピース矯正やインプラントといった自費診療分野では、患者が“医院を選ぶ目”を持っており、比較されやすい傾向があります。以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 治療価格の掲載有無とその価格帯
- 症例写真の有無、症例写真の数、見せ方
- GoogleマップやSNS上の口コミ評価(件数・内容)
- 医院のブランディングや理念、コンセプトの伝え方
特に、治療価格はただ「高い・安い」ではなく、それに見合うだけの説明や安心材料(症例実績、設備、担当医の肩書など)が用意されているかが、選ばれる要因になります。
【2】採用面での競合分析
人材確保の競争もまた、年々激しくなっています。採用において競合に負けないためには、以下のような点を継続的にチェックする必要があります。
- ジョブメドレー、グッピーなど求人媒体での他院の掲載内容
- 給与・福利厚生・休日制度の水準
- 写真や動画など、職場の雰囲気、院長の人柄が伝わる表現の工夫
- 応募から初回連絡までのスピード感
募集中は求人媒体を週1回確認しているか否かでも採用力には大きな差が出ます。これを怠ると、知らぬ間に他院に求職者を奪われ、知らぬ間に「機会損失」が発生します。
■ 分析だけで満足しない、行動に結びつけて初めて意味がある
競合分析の目的は、「知ること」ではなく「行動を変えること」です。
たとえば、以下のような課題を発見した際、すぐに具体策を検討することが重要です。
- 価格が競合より高かった場合
→ 分割払いやローン対応を強調、または「納得感のある価格帯」にするための差別化ポイントを充実させたり、その内容をしっかりと説明したり、時には低価格帯の治療をライナップに入れることも一つの方法です。 - 求人の条件が見劣りしていた場合
→ 経営体力に応じてベースアップを検討し、福利厚生の充実や、歯科医院では少ないですが一般的な会社で求められているCSRの取り組みなどを取り入れるのも一つの方法かもしれません。 - 競合医院の口コミ評価が圧倒的だった場合
→ 受付対応や院内接遇の改善、患者への口コミ促進フローの構築、または、医院側の返信内容を徹底的に拘るなども一つの方法です。
重要なのは、自院で出来る改善策を見つけ、すぐに小さくでも着手することです。
■ 競合分析を“経営判断の武器”に変えるために
日々診療に追われる中で、他院の動きを把握し続けるのは、院長や幹部スタッフにとって簡単なことではありません。
しかし、だからこそ、競合分析を“戦略的な習慣”として仕組みに組み込む必要があるのです。
たとえば、3ヶ月に1回、経営陣のミーティングで以下のようなアクションをルール化するのも一つの方法です。
- 自由診療(特に矯正やインプラント)に関する競合医院3~5医院のHPやSEO、広告をチェックし、何か変化があれば共有
- 求人サイトに掲載されている他院の条件と自院の比較
- 他院のGoogleレビューの情報共有、そのうえで、自院のGoogleレビューに対する振り返りと改善案の検討
こうした仕組みがあれば、「何となくの判断」から、「データに基づいた意思決定」と変わっていきます。
■ 競合分析を習慣しよう
競合分析は、経営の質を高めるための“継続的な取り組み”です。定期的に“今の自院の立ち位置”を見直すことで、費用対効果の高い戦略が立てられるようになると思います。
そして、分析した結果をどう活かせばよいか分からないときは、私達のような外部の支援者のサポートを受けることも一つの選択肢です。