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歯科医院地域一番実践会の五十嵐です。
「求人を出しても、全く反応がない」 「紹介会社に高い手数料を払っても、すぐに辞めてしまう」 「面接に来るのは、条件ばかり気にする人ばかり…」
今、日本中の歯科医院からこのような悲鳴が聞こえてきます。
有効求人倍率が20倍を超えるとも言われる歯科衛生士の採用市場。
もはや、従来のやり方で採用できる時代は終わったと言っても過言ではありません。
多くの院長先生が「給与を上げるべきか」「休みを増やすべきか」と悩まれています。しかし、条件競争には限界があります。資金力のある大型法人には勝てません。
では、どうすればいいのか? 答えはシンプルです。
「戦う場所を変える(差別化)」こと、そして「ターゲットを極限まで絞り込む」ことです。

今回は、あえて「子育て中だが、常勤でバリバリ働きたい」という層にターゲットを絞り、見事に採用難を突破した医院の事例をお話しします。
「誰でもいい」は「誰も来ない」の裏返し
まず、院長先生に質問です。 「どんな歯科衛生士に来てほしいですか?」
もし、「明るくて、素直で、技術があって、長く働いてくれる人なら誰でも」と答えてしまったとしたら、それが採用できない最大の原因です。
万人受けする求人は、誰の心にも刺さりません。 今回の事例医院(A歯科医院)で行ったのは、「ペルソナ(たった一人の理想のスタッフ像)」の徹底的な絞り込みです。
A医院が狙ったのは、「子育て中だが、パートのような補助業務ではなく、プロとしてキャリアを積みたい歯科衛生士」。 彼女たちは、働きたい意欲はあるのに、「19時までの診療には出られない」という理由だけで、泣く泣くパートを選んだり、復職を諦めたりしています。
ここに、巨大なブルーオーシャン(競合のいない市場)がありました。
経営判断としての「17時診療終了」
A医院の院長先生が下した最大の決断。
それは、診療時間を「17時終了」に変更することでした。
「17時に終わるなんて、売上が下がるじゃないか!」 そう思われるかもしれません。
しかし、これは単なる「働き方改革」ではありません。
「優秀な人材を確保するための投資」という経営判断です。
17時に診療が終わり、17時半までには退勤できる。 これにより、保育園のお迎えがあるママさんDHが「常勤」として働ける環境が整いました。ポイントは18時でも、17時半でもなく、17時で終えられるのがポイントです。なぜならば、お子さんの保育園のお迎えを18時前までに行きたいというニーズがある中で、17時であれば余裕をもって間に合うことが可能だからです。
他院が19時まで診療している中、この「17時終了」という条件だけで、A医院は地域の中で圧倒的な差別化要因を成立させることができます。
現場を巻き込む「全体ミーティング」
しかし、トップダウンで「明日から17時終わりで、ママさんを採用する」と言っても、既存スタッフは反発します。「私たちの仕事が増えるんじゃないか?」「えこひいきでは?」という不満が出るからです。
そこでA医院では、採用活動を始める前に「全体ミーティングでのペルソナ共有」を行いました。
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なぜ今、ママさんDHの採用が必要なのか?
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彼女たちが加わることで、医院はどう成長するのか?
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既存スタッフにとってどんなメリット(有給取得率向上、業務分散など)があるのか?
これらを院長の口から熱く語り、スタッフの合意形成を得ました。 結果、「それなら私たちもサポートします!」という空気が生まれ、面接や見学時のウェルカム体制が整ったのです。採用は院長一人でやるものではなく、チーム戦です。

刺さる「採用マーケティング」の実践
ターゲットが決まり、環境が整ったら、次は「伝える」フェーズです。ここで徹底したマーケティングを行いました。
1. 採用パンフレットのペルソナ設定
「綺麗な医院」をアピールするのではなく、「ペルソナの生活」をアピールしました。 パンフレットには、実際に働くママさんスタッフの1日のスケジュール(出勤→診療→退勤→お迎え→夕食)を掲載。「ここなら家庭と仕事を両立できる」という未来を具体的にイメージさせました。
2. スタッフインタビュー動画の活用
文字だけでは伝わらない「医院の空気感」は動画で伝えました。 「子供の急な発熱で休む時、みんなが嫌な顔ひとつせず『大丈夫だよ!』と言ってくれる」 そんなスタッフの生の声を動画にし、求人サイトに掲載しました。これは、どんな好条件の提示よりも、応募者の不安(迷惑をかけるのではないかという恐怖)を払拭する効果がありました。
3. SNS投稿テーマの統一
インスタグラムなどのSNSも、ただの日常投稿をやめました。 「時短勤務でもスキルアップできる環境」「ママさんDHが活躍する歯周病治療の症例」など、ペルソナが「見たい」と思うテーマに絞って発信しました。
4. 採用サイトのブラッシュアップ(成長ステージの提示)
ここが非常に重要です。ママさんDHは「楽をしたい」わけではありません。「成長したい」のです。 だからこそ、採用サイトには「教育制度」と「2年目以降の成長ステージ」を明確に打ち出しました。 「子育て中だからといってマミートラックには乗せない。プロとして評価する」というメッセージは、意識の高い層に強烈に刺さりました。
結果:応募の「質」が劇的に変わった
これらの施策を行った結果、どうなったか。
求人公開からわずか数週間で、経験豊富な30代の歯科衛生士から応募があり、採用に至りました。 彼女は面接でこう言いました。 「どこの医院に行っても『パートでいい?』と言われました。正社員として、責任ある仕事を任せてもらえる医院をずっと探していたんです」
彼女は今、限られた時間の中で驚異的な集中力を発揮し、医院の生産性を大きく引き上げています。
まとめ
採用難の時代において、院長先生に必要なのは「小手先のテクニック」ではありません。 「誰を採用し、誰を採用しないか」を決める覚悟です。
「17時終業」は一つの手段に過ぎません。重要なのは、自院にとっての「理想のスタッフ(ペルソナ)」を明確にし、その人が喉から手が出るほど欲しい環境を用意できるかどうか。
「うちの地域では無理だ」「スタッフが集まらない」と嘆く前に、まずはターゲットを絞り込むことから始めてみませんか?
ここでご紹介した内容は、あくまでも課題に対しての手段の1つですが、もし、同じ用な課題をお持ちで、自院のペルソナ設定や、スタッフを巻き込むミーティングの進め方に不安があれば、ぜひ一度ご相談ください。 一緒に、地域一番の「採用力」を持つ医院を作っていきましょう。
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