歯科衛生士主体の医院へ移行するという戦略的選択

スタッフ教育

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歯科医院経営において、「人の問題」は永遠のテーマです。

特に近年は人口減少が加速しており、その影響はより一層顕著になっています。こうした状況の中で、歯科助手の採用・育成に苦戦しているという声を、多くの院長先生から耳にします。

・求人を出しても応募が来ない
・採用できても定着せず、また一から教育

その結果、現場は疲弊し、院長や歯科衛生士がフォローに追われる状況が続いています。

こうした状態が続く中で、
「このやり方を、この先も続けていくべきなのか」
と疑問を感じている先生も多いのではないでしょうか。

医院の規模やスタイルによって選択肢は異なりますが、歯科助手・受付の採用や育成に悩む医院が検討すべき一つの戦略として、
「歯科衛生士主体の医院へ移行する」
という考え方があります。

本ブログでは、その考え方について触れていきたいと思います。

なぜ今、「歯科助手・受付の採用」がこれほど難しいのか

まず前提として、なぜ歯科助手・受付の採用・育成が難しくなっているのかを整理します。

歯科助手・受付は、
・資格職ではない
・他業界(医療事務、一般事務、接客業など)と人材が競合する

という特徴があります。

つまり、ライバルは歯科医院だけではありません。

一方で、仕事内容は決して簡単ではありません。
専門用語、器具、診療の流れ、患者対応、レセプト周辺業務など、覚えることは多岐にわたります。「未経験OK」と記載されていても、実際には育成に時間と労力がかかります。

その結果、

・採用コストがかかる
・教育中は現場の生産性が下がる
・育った頃に退職してしまう

という悪循環に陥っている医院も少なくありません。

そこで、発想を変える必要があります。

「歯科助手・受付をどう育てるか」ではなく、
「歯科助手・受付がいない前提で考える」

「どうやって採用・育成するか」ではなく、
「そもそも歯科助手・受付に依存しない体制は作れないか」

という視点です。

その一つの答えが、
歯科衛生士主体の医院運営 です。

決して新しい考え方ではありませんが、人材市場が大きく変化している今だからこそ、改めて戦略として検討する価値があります。

歯科衛生士主体の医院に移行するメリット

① 歯科助手・受付の採用・育成が不要になる

最大のメリットは、歯科助手・受付の採用・育成そのものが不要になる点です。

誤解のないようお伝えすると、歯科助手・受付という職種そのものが不要だと言いたいわけではありません。優秀で組織の価値を高めてくれる方も多くいらっしゃいます。ただし、採用・育成・定着までを安定して行えない組織においては、方向性を変えることも一つの選択肢だと考えています。

歯科衛生士は国家資格職であり、
・診療補助
・予防処置
・患者説明

といった業務を、比較的少ない教育コストで即戦力として担うことができます。

新人歯科衛生士であっても、「歯科医院の現場」そのものへの理解があるため、ゼロから教える必要はありません。

これは、院長や先輩スタッフの教育負担を大きく軽減できるという点でも、非常に大きなメリットです。

② 長期雇用を期待しやすい

歯科衛生士の採用競合は、基本的に他の歯科医院です。
一般企業や他業界と直接競合することは少なく、条件設計や働き方次第で長期雇用を実現しやすい特徴があります。

また、

・ライフステージに合わせた働き方
・予防中心で身体的負担を抑えた設計
・キャリアの見える化

といった点を整えることで、「長く働きたい医院」になりやすいのも、歯科衛生士主体医院の強みです。

③ 急な欠員でも予約枠を減らしにくい

完全分業の医院では、急な退職が出た場合、職種ごとに余剰や不足が生じやすく、対応が難しくなります。

一方で、歯科衛生士主体の体制であれば、業務の多くを歯科衛生士がカバーできるため、急な欠員が出ても診療の継続性を保ちやすくなります。

これは、
・患者満足度の維持
・医業収入の安定
・スタッフの心理的負担の軽減

といった点にも直結します。

歯科衛生士主体医院のデメリットと、その対策

もちろん、メリットだけではありません。重要なのは、デメリットを理解した上で設計することです。

① 人件費が上がる

歯科衛生士主体にすると、短期的には人件費は上がります。

ただし、見るべきなのは月額ではなくトータルコストです。

・助手の採用広告費
・教育にかかる時間コスト
・退職による再採用コスト

これらを含めて考えると、定着する歯科衛生士を育てられるのであれば、結果的にコストが下がるケースも多くあります。

② 受付業務への理解が必要になる

歯科衛生士主体にする場合、「歯科衛生士が受付業務をどこまで担うか」は重要なテーマです。

ここで大切なのは、人でカバーしようとしないことです。

・自動電話応答
・WEB予約
・自動精算機
・メンテナンス予約は診療室内で完結

など、仕組みで業務を減らす設計が不可欠です。

「歯科衛生士に受付をやらせる」のではなく、
受付業務そのものを簡略化する
という発想がポイントになります。

③ 事務作業を担う人がいない

助手がいない場合、事務作業を誰が担うのかという課題も出てきます。

この点については、
・非常勤で事務スタッフを雇用する
・事務代行や外部サービスを活用する

といった選択肢があります。

院内ですべて完結させる必要はありません。実際に、事務は外注し、院内は医療職に集中させる医院は増えています。

患者目線で見たときのメリット

歯科衛生士主体の医院は、患者さんにとってもメリットがあります。

・誰に聞いても一定水準の説明が受けられる
・予防やメンテナンスが安定する
・スタッフの入れ替わりが少なく、安心感がある

「毎回スタッフが違う」「説明がバラバラ」といった不安が減り、医院全体への信頼感が高まりやすくなります。

5年・10年先を見据えた経営判断を

歯科医院経営は、「今、回っているか」だけで判断すると、いずれどこかに歪みが生じます。

人材市場が大きく変化している今、
5年後・10年後も安定して続けられる体制かどうか
という視点で、採用・育成戦略を見直すことが求められています。

歯科助手・受付の採用・育成に限界を感じているのであれば、歯科衛生士主体の医院へ移行することは、十分に検討する価値のある戦略です。

「人を増やす」のではなく、
人に依存しすぎない仕組みを作る。

これからの歯科医院経営において、その視点はますます重要になっていくでしょう。

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