マネジメント状態を決める”空気”の重要性

スタッフ教育

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皆さんこんにちは!経営戦略研究所の渡邊です。
「同じ取組を行おうとしても、医院によって驚くほど実施度が異なってしまいます」。その差を決める最大要因のひとつが“場の空気”です。空気は目に見えませんが、毎日の言葉・表情・省略された合意が積み重なり、やがて各人の判断基準を形作ります。良い空気は新人を自然と育て、悪い空気は優秀な人材を静かに遠ざけます。今日は、空気を“設計”する具体策に絞ってお話しします。


1.空気は「設計」できる——省略を捨て、合意をつくる

日本の現場は、非言語の比重が高く“察する文化”が強いがゆえに、曖昧な表現が常態化しやすい特徴があります。
「今期こそ頑張ろう」「前向きにやっていこう」——こうした省略表現は便利ですが、受け手によって意味がズレます。そこで私が最初にお願いするのはぼかし禁止です。朝礼・会議では4W2H(誰が/いつ/どこで/何を/どのように/どれくらい)で語る。さらに**“同じメッセージを8ヶ月繰り返す”。刺激—反応を場に刷り込み、暗黙の合意を明示の合意**へと上書きします。

ポイント:空気は“偶然できる”のではなく、設計して維持する対象。曖昧さを減らすだけで、摩擦と誤解が驚くほど減ります。


2.「締まった空気」を基準に置く——4つの空気の見取り図

現場には大きく4種類の空気が生まれます。

  • 締まった空気:適度な緊張があり、立場に関係なく指摘し合える。言い訳が減る。

  • 緩んだ空気:なあなあが増え、指摘はスルー。基準が下がる。

  • 縛られた空気:特定の人に支配され、部下→上司への指摘が封じられる。優秀者が離脱。

  • ほどけた空気:倫理観が崩れ、目標達成を諦める言説が公然化。思考停止。

医院の成長局面(黎明→成長→過渡)で空気は揺れますが、目指すべき基準は常に「締まった空気」です。緩みを放置するとほどけ、締めすぎると縛りへ。リーダーの役目は原点回帰の舵取りにあります。


3.“可燃人”を中心に燃やす——262の法則×Will/Skillの実装

人材は自燃(2)・可燃(6)・不燃(2)に分かれます。チームを押し上げる主力は可燃の6割。ここにティーチングを徹底するのが最短です。

  • Will/Skillマトリックスで「意思は高いが、やり方が曖昧」な層を特定。

  • **守破離の“守”**を“4W2Hの手順”として渡す。

  • 成功体験を積ませ、場の空気の中核に押し上げる。

一方、不燃層は“反発”が多く、過剰な説得で場が荒れます。原則はスルー(目に余る行為は別途是正)。自燃層には役割と裁量を渡し、“締まった空気”の見本を背中で見せてもらいます。


4.承認は「水準×期間」で——過剰承認と金銭刺激の落とし穴

現場を早く変えたいほど、褒めすぎ・お金の刺激に頼りがちです。しかし、

  • 過剰承認は、貢献水準と承認レベルのズレを生み、認知的不協和で空気を荒らします。

  • 金銭的報酬の乱用は“好きだから頑張る”を“報酬があるから頑張る”に置換し、内発動機を損ないます。

承認は水準と期間。合意した基準に達する行動が一定期間継続した時に称える。報酬は定義と測定の透明性を整えてから。これだけで、空気は安定します。


5.言い訳を先回りで消す——プリフレームと“言い訳DB”

空気が緩むと増えるのが**作話(後付けの正当化)**です。対策は先回り。

  • プリフレーム:原理原則→目的→経緯→役割→期日→量を最初に示す。

  • My Friend John話法:伝える側と同じ位置に立つ語りで心理的抵抗を下げる。

  • 言い訳データベース:よく出る反応(時間がない・前例がない…)を最初から潰す設計にしておく。

結果、議論が“人格”から“手順と数字”に戻り、空気の温度が締まり直します


6.“良い空気”を移植する——外部体験×院内共有会

人は近くの人の言動だけでなく思考まで模倣します。だからこそ、可燃人を良い空気の場へ送り出し、戻ってきたら院内共有会で“移植”するのが近道です。見学やセミナーは“即効の売上”より、空気の質を変える投資と捉えてください。結果として“自走する新人”“助け合いが自然な導線”が生まれます。


7.8ヶ月の浄化計画——明日からの実装手順

空気の浄化には8ヶ月を見込みます。以下を“カレンダー運用”してください。

  1. ぼかし禁止デー:明日の朝礼から4W2Hのみで話す。

  2. 2分の存在承認:毎日3名に、事実+ねぎらいの短い声かけ。

  3. 週次“同じ話”:同じ順序・同じ言葉で、原理原則を繰り返す。

  4. 基準書の更新:受付・カウンセリング・導線をティーチング台本化。

  5. 称賛テーマ:月ごとに1テーマ(例:先手の声かけ)を決め、月末に水準×期間で称える。

  6. 数値の現在地:新患・自費・保険点数・リコール・キャンセルを“あるべき姿との差”で共有。

この“同じことを繰り返す”地味な運用が、空気を締め直し、定着させる唯一の王道です。


8.衛生士インセンティブとの付き合い方(補論)

空気設計と切り離せない論点として、インセンティブ運用があります。私の基本姿勢は「推奨はしないが、導入するなら土台を整えて慎重に」です。

  • 幹部の合意:まずは衛生士リーダー/助手リーダーを軸に導入意図を共有。合意なき導入は分断を生む。

  • 他職種の評価窓:TC手当、PJリーダー、後輩教育など多様な貢献の窓を用意。

  • 技術・対応力の基準:定量だけでなく、長期継続率・説明力・研鑽を評価に組み込む。

  • 算定ルールの透明性:誰の成果か、自費/保険の扱い、記録方法を事前合意。

  • 人件費率のガバナンス:採用難の時代、定着と効率で人件費率を下げ、その余剰で付与。期間設計で“逆インセンティブ”(今月もう無理だから頑張らない)を防ぐ。

インセンティブは魔法の杖ではありません空気という土台が整って初めて、善循環の燃料になります。


9.スーパースタッフセミナーのご案内

ここまでの“空気設計”を、歯科の現場仕様に落とした実践プログラムがスーパースタッフセミナーです。

  • 4W2Hのティーチング台本(受付・カウンセリング・導線)

  • 言い訳DBテンプレとプリフレーム話法

  • 承認=水準×期間の運用シート

  • 8ヶ月浄化カレンダーの医院内展開方法

「新人が勝手に育つ空気」「助け合いが自然に起こる導線」を、医院で再現できるように設計しています。詳細はこちらからご覧ください。
https://www.consuldent.jp/seminor/superstaff.html


おわりに

空気は“管理不能な雰囲気”ではなく、マネジメントの成果物です。
省略をやめ、具体で語り、同じ原理原則を繰り返す。可燃人を中心にティーチングで火を点け、承認は水準×期間で行う。たったこれだけで、空気は締まり、数字は素直に反応します。

「空気を味方に付ける」——先生の医院で、明日の朝礼から始めてみませんか。運用の落とし込みや評価制度との整合も含め、私も全力で伴走いたします。

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