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皆さん、こんにちは!
歯科医院地域一番実践会の五十嵐です。
急な質問ですが、このブログをご覧になっている院長先生に伺います。
今の医院は成長の踊り場にいませんか?
地域に根差し、スタッフ数も増え、一定の規模まで医院を大きくしてこられた院長先生。かつては右肩上がりだった成長も、ここ数年は横ばい、あるいは微増にとどまってはいませんか?
年商1億~2億という数字は、歯科医院にとって一つの大きな節目です。院長先生個人の圧倒的な努力と、スタッフの皆さんの頑張りがあれば、このステージまでは到達できます。しかし、ここから先、さらに上のステージを目指そうとしたとき、多くの院長先生が目に見えない壁に突き当たります。

・売上をこれ以上伸ばそうとすると、院長自身の診療時間を増やすしかなく、体力が持たない
・新しい自費メニューやシステムを導入したいが、日々の忙しさでいつの間にか立ち消えてしまう
・スタッフの数が増えるほど、人間関係の摩擦や細かい調整事ばかりが増え、院長の精神的な負担が重くなる
もし、先生が一生懸命やっているのにこれ以上の成長が見えないと感じているなら、それは先生の能力の限界ではありません。これまでの「院長がすべてを把握し、すべてを決めるスタイル」という組織の形が、物理的な限界を迎えているサインなのです。
次のステージへ進むためには、先生の役割を根本から変える必要があります。
そのために不可欠なのが、院長の分身となり、経営の屋台骨を支える事務長の存在です。
成長の壁を突破する為の投資とは?
成長が止まっている医院と、成長し続ける医院の差は、院長がどの領域に時間を使っているかで決まります。
第一領域(緊急で重要)
急患対応、クレーム処理、機器の故障対応など
第三領域(緊急だが重要でない)
材料の発注、業者対応、日々のシフト調整、細かな経理作業など
第四領域(緊急でも重要でもない)
目的のない会議、だらだらとしたネットサーフィンなど
そして、最も重要なのが次の領域です。
第二領域(緊急ではないが、極めて重要)
これが医院の未来を創る仕事です。
・自費診療を標準化するためのカウンセリングフローの再構築
・スタッフが自走し、定着するための教育制度や評価制度の確立
・予防管理型への完全移行など、医院のビジネスモデルの転換
・分院展開や移転、リニューアルなど、次なる投資に向けた事業計画の策定
・地域連携やブランディングなど、中長期的な集患戦略
成長が止まっている医院の共通点は、院長先生が第一領域の火消しと、第三領域の雑務に1日の大半を奪われ、この第二領域に全く時間を割けていないことです。
「時間ができたら考えよう」と思っているうちに、1年、2年と過ぎていく。これではステージは変わりません。次のステージへ進むための唯一の手段は、院長を実務から解放し、第二領域の実行責任者として事務長を配置することなのです。
事務長は第二領域を具体化し、実行するエンジンである
事務長は、単なる事務員や秘書ではありません。院長先生が描いた「理想の歯科医院」というビジョンを、現場で動く形にするプロフェッショナルです。特に、成長が止まった組織を再び動かすために、事務長は以下の2つの大きな役割を担います。
1. 人間関係のストレスを解消し、組織を安定させる
組織が大きくなると、院長の目が届かない場所でスタッフ同士の不満や温度差が生じます。
これが放置されると、離職や士気の低下を招き、医院の成長を阻害する最大のブレーキとなります。
事務長の適性にもよりますが、先生に代わって「マネジメント」を任せていくことで、より取組を推進していくことができます。
・定期的な個別面談の実施
診療に忙しい先生に代わり、スタッフ一人ひとりの声に耳を傾けます。不満が小さいうちに察知して解決することで、組織の安定を図ります。
・評価制度の運用
作っただけで眠っている評価制度を、日々のフィードバックを通じて運用に乗せます。スタッフが「何を頑張れば評価されるか」が明確になれば、組織は自ずと活気づきます。
・採用戦略の主導
求人媒体の選定から、面接、入社後の教育(オンボーディング)までを一貫して管理します。先生は最終決定だけを行えばよくなります。
2. 経営を数値化し、次の一手を確かなものにする
院長の「勘」に頼った経営から、データに基づいた経営へと移行を目指します。
・経営分析の見える化
自費率、キャンセル率、チェア稼働率、新患数などを数値化し、どこに課題があるかを可視化。院長が指示しなくても、対策をいち早く考察し、実践に移すことで成果につながりやすくなります。
・コストの最適化
材料費や外注技工費、広告宣伝費などを精査し、業者交渉を含めた利益率の改善を行います。
・投資判断のサポート
新しい機器の導入やリニューアルを行う際、どのくらいの期間で投資回収ができるかをシミュレーションし、先生の決断材料をそろえ、適切な判断をしやすくします。
これらの実務を事務長が担うことで、院長先生は心おきなく「第二領域」の構想を練り、高度な診療に集中することができるようになります。
事務長をどのように調達すべきか
成長を加速させるための右腕をどう確保するか。これには、医院の状況に合わせて2つの選択肢があります。
① 内部昇格:現場を知るスタッフを経営側に引き上げる
まずは既存スタッフの中で、適性のある人材を探すのが近道です。特に、長く勤めていて医院の理念を理解し、他のスタッフからの信頼が厚いチーフクラスなどは候補になります。
・適性を見抜くポイント
診療スキルが高いことよりも、客観的に物事を見られる「冷静さ」と、数字に対する「アレルギーのなさ」が重要です。また、院長とスタッフの間に立てる「調整能力」や院長との信頼関係、スタッフからの信頼は欠かせません。
・育成のステップ
いきなりすべての事務長業務を丸投げしてはいけません。まずは採用の実務や在庫管理など、一部の権限から移譲していきます。併せて、外部の事務長養成講座やマネジメント研修に通わせるなど、経営者感覚を養ってもらうための投資を行うことが重要です。現場感覚を持った事務長は、スタッフや院長にとってなくてはならない存在になると思います。
② 外部採用:他業界の知見で変化を加速させる
内部に適任がいない場合、あるいは一刻も早く現状を打破してステージを変えたい場合は、外部からの採用が非常に有効です。
・メリット: 一般企業での管理職経験者や営業経験者は、歯科業界の「当たり前」にとらわれない視点を持っています。業務の効率化やマニュアル化、数値管理において、歯科業界にはないスピード感で組織を改革してくれる可能性があります。
外部採用を決断した際に必要な待遇と覚悟
外部からプロフェッショナルな人材を招く場合、一定のリスクや投資意識、決断が必要です。「人件費をコストではなく投資と捉える」
・責任に見合った適切な待遇
優秀な事務長候補は、他業界でも活躍できる能力を持っています。彼らは自身のキャリアを賭けて、院長先生のビジョンに参画します。そのリスクと専門性に応えるためには、一般的な歯科助手や衛生士の給与体系とは一線を画す、一定の待遇を用意する覚悟が必要です。
・成果連動型のインセンティブ設計
事務長が単なる「高給な事務職」にならないよう、成果に応じた報酬体系を整えることも重要です。「自費率が〇%向上した」「離職率が〇%改善した」「コストを〇%削減した」など、第二領域の目標達成に応じたインセンティブを設定しても良いかと思います。事務長自身が「医院の利益が自分の喜び」と感じられる仕組みがあれば、その貢献度は給与の数倍になって返ってきます。

最後に:院長先生、再び情熱を燃やせるステージへ
今の停滞感は、先生が一人で全てを背負い、頑張りすぎてきた証拠です。院長先生の時間は有限です。その時間を、誰にでもできる事務作業や、精神を削る人間関係の調整に使い続けるのは、医院にとって最大の損失ではないでしょうか。
先生は、誰にも真似できない最高の臨床を追求し、医院が5年後、10年後にどうあるべきかという大きな海図を描くことに命を燃やす。そして、それ以外のあらゆる実務、マネジメント、そして第二領域の具体的な実行は、信頼できる事務長という右腕に託す。
この役割分担こそが、成長が止まった医院を再び動かし、次のステージへと押し上げる唯一の手段です。
先生が経営の重圧から解放され、再び「ワクワクする経営」を取り戻すために。 そして、患者さんにとってもスタッフにとっても、より価値のある医院へと進化させるために。 あなたの右腕となる事務長の配置を、今この瞬間から真剣に検討してみませんか?
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