【学術論文活用シリーズ】患者を離脱させないために重要なことって何?

自費率・リコール率アップ

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歯科医院地域一番実践会の五島光です。私は歯科医院専門のコンサルタントとして15年ほどの経験があります。全国の歯科医院の皆さんが着実により強い医院になるためのお手伝いをさせて頂いています。また、それだけではなくて、この写真にある通りスーパーTC育成塾、スーパーTCアドバンスというセミナーでメイン講師を務めています。さらに社会人大学院に通っておりまして学位を取るための研究をしています。専門は消費者行動、サービスのマーケティング・マネジメントです。

今回は学術論文活用シリーズということで「患者さんを離脱させないために重要なことって一体何だろう」ということお伝えします。経験と勘だけではなくて学術研究からわかったことも取り混ぜながら、お伝えしていきますので、ちょっと難しいことが出てくるかもしれませんが、業務改善に役立つのでぜひ最後までお読みください。

今回は三つの論文を紹介したいと思います。

三つの論文

まず一つ目の論文です。

うにゃうにゃと英語で書いてありますが、オーラスヘルスケアプロバイダ、つまり歯科医療に携わる方々のコミュニケーションについて、患者さんがどう見ているのかというお話です。コミュニケーションをする人(歯科医師と歯科衛生士)の影響とその中身について分析しています。

結論から言うと、歯科衛生士より歯科医師からのメッセージの方が印象に残りやすいです。当たり前の結論ですが、当然のことが学術で確かめられているということが大切です。歯科医師と患者のコミュニケーションでポジティブな経験を患者は46%、ネガティブな経験をした患者およそ20%。

歯科衛生士とのコミュニケーションでポジティブな経験をした患者20%、ネガティブな経験をした患者は7%ほどでした。なお、ポジティブとは仲がいいと共感してもらえた親切にしてもらえたことで、ネガティブとはきつい指導を受けたイヤミを言われたという経験です。

やっぱり先生とスタッフだったらば先生の患者さんのインパクト強いということです。だいたい歯科医院では先生1人に対してスタッフは何人もいますから、患者さんから見れば1人だけいる先生の法が目立ちますよね。これだけ見ると歯科医師だけが目立ってるから「先生がんばって」となるんですが、それは早計です。

先生方は忙しいです(もちろんスタッフの方も忙しいですが)。患者さんごとに集中して行ったり来たり忙しいですけども(歯科治療は外科処置ですし)、この結論だけを見ると先生だけがんばればいいとなるんですが、違う結論もあります。

それは歯科衛生士によるポジティブなコミュニケーション(親切にしてあげたいとか話を聞いてあげてあげたい)が歯科医師の評価(満足度を高める)という結果になっています。歯科医師の評価はそのままその歯科医院の評価になりがちなので、スタッフの方が患者教育・共感のあるコミュニケーションをすることで、歯科医師の評価→歯科医院評価につながっていくということです。多くの場合、ちょっとやるモチベーションの低いスタッフから「先生から説明してほしい」「先生のほうが患者さんが納得するんじゃないか」、そういうもっともらしい理由を並べて「自分は説明したくない」っていうようなことを言われることがあります。

確かにそれもあるかもしれませんが、先生は忙しいし、なかなかそういう時間は取れません。だったら、やらないよりスタッフからポジティブなコミュニケーションを取ったほうがいいです。スタッフがコミュニケーションを取れば、結果として歯科医師・歯科医院の評価が上がります。スタッフによる患者さんの説明やTC業務や親切なコミュニケーションはますます大事になってきます。接遇が大事だという根拠にもなりそうです。

 

 

二つ目の研究がこちらです。イタリアを舞台にした研究です。日本語に訳すと「歯科医院で他のライバルとの競争を勝ち抜くために患者満足とのコミュニケーションがすごく大事」ということです。論文では、イタリアでは競争が激しくなってますって書いてあって、日本でも競争は激しく、これだけ見ると状況は似ています。なので、イタリアを舞台にした研究でもこれが参考になると思います。

タイトルかわかるように「歯科員がライバルとの差をつけるにはどういったものが大事なのか」が書かれています。研究によると、2つ大事なことがあります。

1つめが、先生と患者の関係。2つめが、治療費用に関する明確にしたわかりやすい情報を提供することです。これら2つのことが他の歯科医院との差別化につながり、競争に勝てますよということが書いてあります。

これもとても当たり前ですね。先生はチェアサイドで患者さんとやり取りすると思いますが、そういうのが非常に大事だったということです。忙しさにかまけてコミュニケーションを取らないのはよくありません。

「今回はこういう治療をしました」などわかりやすく説明するだけでなく、場合によっては「治療はしましたが、また腫れてくる可能性はゼロではないと思います。そういう場合はまた来てください」など親切な対応も含まれます。費用に関する説明もできるだけやったほうがいいです。

何度も言いますが、これ当たり前です。なので、院長先生はできていると思いますが、勤務医の先生はどうでしょうか。院長先生は経営トップですから、責任感をもって一生懸命してないといけないです。しかし、勤務医の先生で「患者さんとの関係を良くしよう」とか「治療説明しよう」とか「費用の説明しよう」とはなかなかできる方は少ないと思ってます。

どうしても若手の先生が多いんで一生懸命、スキルの方に注目してしまうことがあると思うんですけど、サービスは目に見えないもの(「サービスの無形性」)なので、患者さんが評価の手がかりにするのは目につくところ、歯科医療従事者の人間性とか設備がどうなってるいる、そういうものが目につきやすく、評価の手がかりになります。

「親切にしてもらえた」とか「わかりやすい説明をしてもらえた」などは患者さんにとってわかりやすいです。専門知識がなくてもわかりやすいです。「先生と患者の関係」も「歯科治療の説明ははっきりわかりやすく」伝えることも医院全体でできているかどうかが他院との差別化つながります。

この研究には「歯科医師と患者との関係」「治療と費用に関する明確なわかりやすい情報」が大事で競争優位の源泉であるという話になっていますが、一方でそんなに大事にしなくてもいいかもという項目も書かれています。

それは一体どうなのかというと快適さ、予約時間、時間の正確さです。これらはだいたい平均的でよく、よくしても評価につながりにくいものです(もちろん、クレームになるレベルではありません)。たしかに、時間厳守は大事なことかもしれませんが、待ち時間ゼロを目指すよりも、関係性とか説明をわかりやすくしたほうがライバルとの差別化につながります。

また、他にもプライバシーの尊重とか支払い方法、予約制をちゃんとやってますっていうことは普通になってるから良さが気づかれにくいです。例えば、完全個室ですよっていうのもそこまで満足度の評価にはならないです(集患という点では別ですが)。

ただこれに関しては最近事情が変わってるんじゃないかなと思います。支払い方法に関して非接触・キャッシュレス決済が広まっていますし、満足度につながる可能性はゼロではないだろうと思っています。

最後三つ目の研究です。ハイコンタクトは「よく接触する」、歯科医院の場合は受付でも対応しますし、スタッフが呼ぶときも対応しますし、先生は治療を行う、説明もしないといけないし、いろんなところで接触します。そういうのを「ハイコンタクトサービス」といいます。歯科医院のようなハイコンタクトサービスでは、どんなサービスの失敗やミスが起きているのかを調べた研究です。これは1075人の日本の歯科に通ってる患者さんの声を分析しました。その結果、12種類のクレームが出てきました。

1番目は治療費、2番目は不信感、3番目は治療の質、4番目は受付の態度、5番目はアポや治療時間、6番目は治療の恐怖、7番目は治療以外のサービス、8番目は歯科医師やスタッフの態度の悪さ、9番目は診療室の環境、10番目は治療が終わるまでの期間、11番目は衛生士業務、12番目は自費治療です。なお、順番は関係ありません。

この12種類を全部ゼロにしてかなきゃと思いがちなんですが、なかなか限られた経営資源ですので対応できないものもありますよね。12番目の保険診療とかはどうしようもないです(政府に働きかけていくってことはできるかもしれませんが)。

この不満のうち特にどれが患者さんは離反する原因になのかというと3つだけです。それは不信感、治療以外に関する条件、治療期間です。この三つが患者さんの減少に関わる可能性があるといことです。

さて、まとめですが、3つの研究が得られることはやはり「コミュニケーションの重要性」です。歯科医師のインパクトは大きいですが、スタッフもポジティブなコミュニケーションも歯科医院の評価を高めるために欠かせないものです。勤務医の方には治療の技術はがんばって上げてほしいですが、コミュニケーションも忘れないでください。

 

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